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「妻の不倫のせいで別れました」SNSやLINEグループで細かすぎる離婚報告、名誉毀損じゃないの?
画像はイメージです(jessie / PIXTA)

「妻の不倫のせいで別れました」SNSやLINEグループで細かすぎる離婚報告、名誉毀損じゃないの?

離婚するにあたって「インスタグラムやSNSで、これまでの夫のモラハラや暴言を記載して皆に知らせたい」と弁護士ドットコムに相談が寄せられました。他にも「自分が原因ではないので『妻の不貞行為により』と付け加えてSNSで皆に伝えたい」という人もいます。

厚生労働省の統計では、毎年20万件前後のカップルが離婚しています。理由はさまざまですが、職場や友人にはどこまで説明し、どう報告したらいいのでしょうか。SNSでの発信は名誉毀損には当たらないのでしょうか? 近藤美香弁護士に聞きました。

●友達だけのつもりでも不特定多数に広がれば、名誉毀損になる可能性も

――SNSで離婚の理由を詳細に書くことは名誉毀損に当たりますか?

名誉毀損に関しては、刑法230条1項の名誉毀損罪に該当するかどうか、と民法709条・同710条の不法行為に該当するかどうか、という2つの問題があります。

刑法230条1項の名誉毀損罪 「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」

分かりやすく言うと、人の社会的評価を低下させるような事実を、不特定多数の人に知られるような状態にすると、名誉毀損罪に該当する、ということです。

SNSに載せれば、通常は不特定多数の人が知り得る状況になりますので、載せる事実の内容が、人の社会的評価を下げるような内容の場合は、名誉毀損罪に該当する可能性があります。

本件の場合も、SNSに載せる内容の程度にもよるとは思いますが、名誉毀損罪に該当する可能性があると思います。

次に、民法上の不法行為に該当するかどうかについてですが、名誉毀損罪に該当するような行為は、通常は民法709条の不法行為にも該当する場合が多いと考えられます。

また、名誉毀損罪として、警察が動かないような場合でも、被害者の社会的評価が下がったような場合は、損害賠償が認められる可能性があります。

――ツイッターやFBではなく、友人同士のLINEグループや非公開アカウント、メールで の報告など不特定多数でなくとも、名誉毀損に該当しますか?

特定の友人のみということであれば、名誉毀損罪には該当しないと考えられます。

ただし、特定の人のみに伝えた場合であっても、その人が拡散したり公開することが予測される場合等、他の不特定多数に伝わる可能性があるような場合は、名誉毀損罪に該当すると判断される可能性もあります。

●あくまで事実を報告しただけ!と言ったとしても…

――あくまで「不貞行為が理由だと客観的事実を示しただけ」で、「相手の社会的評価を落とすつもりはなかった」と抗弁した場合、認められる可能性はありますか?

認められません。 不貞行為は一般的に、社会的評価を下げ得る事実と考えられます。したがって、不貞行為の事実を公開するという認識があれば、故意があると判断されます。

ただ、表現の自由との兼ね合いもありますので、名誉毀損に該当し得る行為があったとしても、逐一名誉毀損罪として警察が動いたり、民事訴訟が提起されるというわけではありません。程度問題となるため、名誉毀損として問題となるかどうかについての判断は、難しい場合が多いと思います。

――結婚式に参列した人やお祝いをもらった人など離婚の報告をどこまでするか判断に迷う方も多いようです。報告するべき範囲はどのように考えれば良いでしょうか?

離婚報告については、特に法律で定められていませんので、個人の判断になりますが、税金や社会保険等の関係で手続きが必要な場合は、勤務先等には報告すべきでしょう。

一方、SNS等で離婚原因まで発信すると、その内容によっては、上記のように名誉毀損に該当する可能性がありますので、元配偶者の立場にも配慮しながら報告することをお勧めします。

プロフィール

近藤 美香
近藤 美香(こんどう みか)弁護士 エトワール法律事務所
弁護士登録直後から大手弁護士法人にて500件以上の離婚・不倫慰謝料問題の解決に関与。夫婦カウンセラー資格保有。これまでのキャリアを生かし、独立後も引き続きこれらの問題に注力しています。

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