3月中旬に82歳で亡くなった俳優の宇津井健さんが、息を引き取る数時間前に「再婚」していたことがわかり、話題になっている。
報道によると、再婚相手は、宇津井さんの40年来の知り合いである加瀬文恵さん(79)。2006年に宇津井さんが前妻をなくして以降、2人はともに食事をしたり、旅行したりする仲で、ここ半年ほどは、体調を崩した宇津井さんが加瀬さんの自宅で療養していたという。
伝えられたところでは、宇津井さんは亡くなる前に「僕はどうしても加瀬文恵の夫として死にたい。君は宇津井健の妻として喪主をしてくれ」と加瀬さんに申し入れ、承諾を受けた。そして、婚姻届が代理人によって提出された日、その数時間後に、宇津井さんは息を引き取ったという。今回の再婚は、宇津井さんの親族も納得しているそうだ。
一般的な話として、婚姻届を出した人がその直後に亡くなったとしても、結婚は有効と認められるものなのだろうか。家族法にくわしい柳原桑子弁護士に聞いた。
●結婚が成立した後のことは問題とならない
「婚姻(結婚)は、両当事者が婚姻の意思と届出の意思をもって、婚姻届を役所に提出することにより成立します。
提出した方がその直後にお亡くなりになったとしても、すでに成立した婚姻に影響することはありません。
たとえば、若い方が、婚姻届を提出した後、不意の交通事故で亡くなった場面を想定すると、あまり疑問は感じないのではないでしょうか」
つまり、2人の意思に基づく婚姻届が有効に提出されれば、その後に起きたことは問題とならないわけだ。問題とされるケースがあるとすれば、どんな場合だろうか。
「本件とは全く別の話ですが、たとえばご病気でときどき意識が混濁していた方が、婚姻届を提出し、その数時間後にお亡くなりになったという場合などであれば、婚姻の意思があったのかが疑われ、婚姻の有効性が問題となる場合もあり得ます」
●故人の「意思」にスポットが当たる場合も・・・
柳原弁護士によると、争いになるケースの多くは「相続問題」がらみのようだ。
「あくまで一般論ですが、婚姻すると、新妻にも相続権が発生します。そのため、他の相続人からすると、自己の相続分が減ったという不満を持つことが考えられます。
その結果、『財産目当てで故人をだまして、婚姻届にサインさせたのではないか』あるいは『故人はむりやり書かされ、婚姻の意思はなかったはずだ』などとして、婚姻の有効性を争う紛争に発展することも考えられます」
ただし、今回はそうした問題は報じられていない。柳原弁護士は次のように述べていた。
「本件では、宇津井さんが婚姻の申し入れをし、意思の合致により婚姻届が作成され、宇津井さんは婚姻届が提出された旨の報告を受けた、という事実関係のようです。
したがって、宇津井さんの婚姻の意思に疑わしいところはなく、ご親族も婚姻に納得していたということで、こうした問題にはならないケースだったのだと思います」