一風変わった相談が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられている。「風俗・デリヘルでの本番行為は不貞行為と成り得ますか?」という質問だ。
既婚者が、配偶者以外といわゆる「本番行為」に及んだら、不貞行為として、慰謝料や離婚の原因となる可能性がある。それは、相手が「プロ」の場合も同じなのだろうか。質問者は次のような場合が不貞行為になるのかを尋ねている。
・・・夫が特定のデリヘルで働く女性と数年にわたり数十回の「本番行為」を行った。夫はその都度、女性に「デリヘルの基本料金」を支払っていた。女性は営業トークで「本番料金は無料にするから通い続けて」「愛している」などと男性に言っていた・・・
このような場合、法的にはどう考えられるのだろうか。不貞行為にあたるとして、夫は妻から慰謝料を請求されても仕方ないのだろうか。田村勇人弁護士に聞いた。
●「本番」でなくてもアウト
「それは不貞行為となり、離婚理由となります。また、不貞行為には『性交類似行為』も含まれますので、そもそも『本番行為』をしなくても、慰謝料や離婚の原因になります」
田村弁護士はこう強調したうえで、男性がしがちな主張を次のようにバッサリと切り捨てた。
「『風俗は気持ちが入っていないから浮気ではない』と言い訳する男性がいますが、それは裁判所では認められません。
結婚した以上、妻以外(同性も含む)と『性交類似行為』を行うことは慰謝料や離婚の原因になってしまいます。少なくとも現在の判例法理ではそうです。
そもそも、気持ちが入っているか入っていないかなんて、裁判所は判断できません」
●「妻に拒まれた」は言い訳にならない
たしかに、いくら裁判官とはいえ、そこまでの判断は不可能だろう。その結論は、たとえ妻との関係がうまく行っていなかったとしても同じなのだろうか?
「もし、不貞行為の前から夫婦関係が破たんしていたと言えるなら、不貞行為は慰謝料や離婚の原因にはなりません。ただし、破たんが認められるためには、原則的に別居が必要です。
よく『妻が冷たかったから』『妻が性行為を拒んだから』と言う方もいらっしゃいますが、裁判所はそれだけでは破たんとは見なさず、『不貞行為』の正当化理由として認めてはくれません。また現実的にも、冷たかったことやセックスレスを立証するためのハードルは高いと言えます」
そうなると、風俗に通い詰めていたことが妻に見つかったら、その時点で男性はピンチといって良いのだろうか。田村弁護士は次のように結論づけていた。
「もちろん、他の状況によって離婚を回避できる場合もありますが、原則的に『本番行為という不貞行為』が発覚し、妻が離婚すると言ったら、男性側はかなり追い詰められた状況になるというように理解すると良いでしょう」