家庭用ゲーム機を置いた飲食店「ゲームバー」で、販売元の許可を得ず、客にゲームさせたとして、京都市内の2店舗の経営者ら3人がこのほど、著作権法違反(上映権侵害)の疑いで京都府警に逮捕された。
府警によると、京都市中京区の店舗の経営者ら2人は6月13日、カプコン(大阪)などゲーム会社の許可を得ずに、家庭用ゲーム機のソフトを客に貸し出して、店内のゲーム機とテレビモニターを接続して、遊ばせていた疑いで逮捕された。
また、6月12日には、京都市下京区の店舗の経営者が、任天堂(京都)などの許可を得ずに、家庭用ゲーム機のソフトを客に貸し出して、遊ばせていた疑いで逮捕されていた。ゲームバーの摘発は全国初ということだ。
今回のようなゲームバーは、どうして著作権違反にあたるのだろうか。たとえば、子どものころ、友だちを家に呼んで、テレビゲームで遊んだ人も少なくない。それとどう違うのだろうか。著作権にくわしい桑野雄一郎弁護士に聞いた。
●ゲーム映像も著作物にあたる
「今回ゲームバーが摘発されたのは、上映権(無断で公衆に上映されない権利)侵害が理由です。『上映』とは、著作物をスクリーンなどに映写することをいいます。そもそも、ゲーム映像は著作物であり、ゲーム機器あるいは、それと接続したテレビモニターの画面に映し出すことも『上映』にあたります。ですから、著作権者の許可を得なければ、上映権侵害となるわけです」
家に友だちを呼んで、テレビゲームで遊ぶことと、どう違うのだろうか。
「上映権の侵害になるのは『公に』がポイントです。『公衆』に見せる目的で上映する場合に限られます。
著作権法で『公衆』とは、不特定または多数の人をいいます。つまり、『特定かつ少数』の人に見せるために上映をしても、上映権侵害にはなりません。
ですから、家に友だちを呼んで遊ばせる場合は、友だちという『特定かつ少数』の人に見せているだけですから、『公に』にあたらず、上映権侵害になりません」
では、ゲームバーの「客」は「友だち」と違うということだろうか?
「ゲームバーの場合、客という『不特定』の人に見せているわけなので、たとえプレーをしているのが少数だとしても『公衆』にあたり、上映権侵害となるわけです。
同じように、たとえば、数十人〜数百人の同級生全員に見せるとなると、『特定』されていても『多数』になります。『公衆』にあたり、上映権侵害となります。
実は、何人までが『少数』なのかは、法律上、明確ではないのですが、同級生全員となると、明らかに『多数』にあたるでしょう」
●ゲーム実況動画の注意点
ネット上では、ゲームをプレイする画面をうつした「ゲーム実況動画」も人気となっているが、こちらは上映権侵害にあたらないのだろうか。
「ゲーム実況動画は、不特定または多数の人に見せる目的で投稿されています。しかし、動画サイトなどに配信されている著作物は、上映権の対象外とされています。上映権侵害にはなりませんが、ゲーム会社に無断で投稿すると、『複製権』や『公衆送信権』や『伝達権』といった別の著作権の侵害となります。
もっとも、現在のところ、ゲームの宣伝になるなどの理由で、ゲーム会社が、条件付きで許可を与えたり、黙認したりしていることが多いようです。ただし、有料配信したりすると、ゲーム会社も黙認しないでしょう」