さいたま市大宮区のソープランド「kawaii大宮」で、12月17日に起きた12人が死傷する火災。報道によると、店舗は1960年代半ばに建てられた鉄筋コンクリート3階建てで、2階の南階段付近のごみ置き場が火元と見られる。北側の階段しか使えなかったことが、逃げ遅れにつながった可能性があるという。
くわしい原因究明はこれからだが、この店のように店舗型の風俗店は古い建物であることが多く、火災や地震の被害に遭いやすい面があるとも言われている。理由の1つは、風営法などで事実上、大幅なリフォームや建て替えが困難になっていることだ。
●「本当はなくしたい」が警察の本音?
ソープランドや店舗型のヘルス店は、風営法や条例によって、学校や病院などから何メートル以内は禁止といった風に、出店禁止区域が設けられている。区分けは細かく、風俗業界の問題に詳しい若林翔弁護士によると、「店鋪型の風俗店の新規出店はもうできないと思った方が良い」。
一方、これまで営業してきた店については、同一性の保持を条件に営業が認められている。
「本当はなくしたかったにもかかわらず、今あるところをいきなりなくしたら大変だから、風営法の改正前に届出を出していたお店がやっている限りは許すよ、という既得権が認められているのが風営法の構造」(若林弁護士)
そのため、新しく店鋪型の風俗店を出店する場合は、すでにある店舗を居抜きするだけでなく、経営する法人ごと買収することが多いそうだ。
看板を変えてリニューアルオープンする際も、同一性が大切なので、大幅な設備変更は難しいし、所轄の公安委員会に変更箇所や理由を届け出なくてはならない。建て替えになると、構造や設備が丸ごと変わってしまうので、店のオーナーは事実上手を出せないという。
建物が老朽化すれば、消防法や建築基準法などに抵触し、営業できなくなることも考えられる。現状ではいずれ、ソープランドはなくなる可能性が高い。
「ただし、老朽化すれば、事故のリスクも上がる。法律的には、そもそもソープランドはどうなのかという問題もあり、警察の考え方次第では、増改築が事実上見逃されるということもあり得るかもしれない」
今回の火事の原因を究明するとともに、同様の悲劇を繰り返さなくて良いよう法改正や運用の変更などの対策も検討する必要がありそうだ。