自身が参加した飲み会の写真をフェイスブックに載せた知人女性から、現金を脅し取ったとして、歌手松山千春さんのものまねタレント(55)が11月下旬、恐喝の疑いで警視庁に逮捕された。
報道によると、ものまねタレントは、知人女性に対し、「肖像権の侵害だ。仕事がキャンセルになったので金を払え」と電話で脅して、13万円を銀行口座に振り込ませた疑いがもたれている。ものまねタレントは「正式なオファーを受けた仕事のギャラとして請求したつもりだった」と容疑を否認しているという。
今回は、肖像権の侵害を理由に損害賠償を請求していたことが恐喝にあたると判断されて、逮捕につながったそうだ。ただ、誰でも気軽に写真を撮影して、SNSなどに投稿できるようになったいま、芸能人を見かけたらつい撮影したくなる人もいるだろう。
もし、有名人の写真を撮影し、SNSなどで公開した場合、肖像権の侵害に当たる可能性はあるのだろうか。木村充里弁護士に聞いた。
●商品やビジネスをアピールする目的があると肖像権侵害になる可能性
「有名人かどうかにかかわらず、人には、人格権の一部として、『自己の氏名、肖像を他人に冒用されない権利』があると考えられています。そして、有名人の肖像には、『顧客吸引力』といった財産的価値が認められることがあります。
最高裁は、いわゆるピンクレディー事件判決(平成24年2月2日)で、無許可で有名人の肖像を利用することが、財産的な意味での肖像権侵害(不法行為)になるのは『専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合』であるとしました。
つまり、ただ有名人の名前や写真を雑誌やSNSに使っただけですぐに肖像権侵害(不法行為)になるわけではなく、有名人の肖像を鑑賞するための商品を無断で作ったり、名前や写真を商品に付けたり、有名人の名前や写真を広告として使ったり、といった『専ら肖像のアピール力を利用する目的』とみられるような使い方が禁じられたのです」
具体的には、どういう使い方をすると問題になるのか。
「SNSへの公開でいうと、商品やビジネスをアピールする目的で、有名人の写真を広告のように、または、グラビアや写真集のように使ってしまった場合などは、肖像権侵害にあたるおそれがあります。
その一方で、個人の方が、イベントやお店等で出会った有名人の写真を撮影し、1枚2枚、自分のアカウントで公開しても肖像権侵害にはなりにくいでしょう。
そのほか、肖像にはプライバシー権の問題もあります。また、コンサート会場など、その場所での撮影が禁止されている場合に無断撮影をしたときは施設管理権に触れるといわれそうです。
SNSとスマホが広まることで、誰でもすぐに写真を撮って公開できるようになりました。正しい知識を身につけ、自分も相手も守りながら、楽しく利用なさってくださいね」