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全国初、匿名ドナーの「卵子提供」で女児出産…NPO、生殖医療の法整備訴える
会見の様子(3月22日、厚生労働省記者クラブ)

全国初、匿名ドナーの「卵子提供」で女児出産…NPO、生殖医療の法整備訴える

神戸市のNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD-NET)」は3月22日、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで記者会見を開き、匿名の第三者から提供を受けた卵子と夫の精子を体外受精させ、40代の女性が、女児を出産したことを発表した。姉妹や友人ではなく、第三者のドナーからの卵子提供による出産は、全国で初めて。ただし、OD-NETは、親子関係の確定など、生殖医療をめぐる法整備が遅れているとして、国に対応を求めている。

出産は今年1月で、母児ともに健康。

記者会見では、出産した女性の喜びのコメントが紹介された。「妊娠、出産、育児をとおして『生きる希望』ができたと感じています。子供が欲しいと強く感じていながらも、病気のために恵まれず現在も苦しんでいる人が大勢います。そういう人々の希望になれば幸いです」

また、卵子を提供した30代半ばのドナーのコメントも紹介された。「皆に望まれた命が、この世に生まれるお手伝いができたことを大変嬉しく思います」

●「法整備がないと、反社会的行動だと思われてしまう」

OD-NETは2013年、当事者の家族が中心となり、医師や法律家、カウンセラーなどの協力を得て設立。卵子の提供者を募り、協力施設(不妊専門クリニック)で提供卵子による体外受精の実施を支援している。

記者会見で、OD-NET理事長の岸本佐智子さんは、「匿名の無償による卵子提供が、我が国でも可能であることを証明した」と喜びを語ったうえで、親子関係を明確に定める法律の整備を強く訴えた。「法制化により、安心して、医療が実施でき、うまれてくる子どもの生活や福祉が守られる。親子関係を明確に定める法律の整備を早急にお願いしたい」

2003年5月、厚生科学審議会生殖補助医療部会による報告書(精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書)が作成され、条件付きながら、卵子提供体外受精・胚移植の実施を容認した。しかし、その裏付けとなる法律はいまだ成立していない。

OD-NET理事の高橋克彦医師は、生殖医療をめぐる現状について、「法整備の壁が立ちはだかっている」と指摘した。「法整備がないため、卵子提供、精子提供による体外受精は反社会的行動ではないか、と思われてもやむを得ないところがある。国が(法律で)非配偶者間の卵子提供を認めれば、子どもへの告知もスムースに進むであろうし、卵子提供者を集めていくことができる」

●卵子提供とは

日本では、生殖医療をめぐる法整備はなされておらず、不妊治療の現場では、独自のルール作りを行ってきた。1983年に日本産科婦人科学会が作成した「体外受精は婚姻関係にある夫婦のみに認められる」という会告に基づき、今でも日本国内の多くの医療施設で、第三者からの卵子提供は行われていない。

一方、不妊治療の技術は進歩している。そこで、「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」に加盟する施設など、友人・家族などからの卵子提供による非配偶者間体外受精を行う施設も出てきている。しかし、提供者が見つからなければ、このような施設でも体外受精は望めない。2013年に設立したOD-NETは、匿名のドナーを募り、提供希望者をマッチングする日本で初めての団体だ。協力実施施設でJISARTのガイドラインに基づき、治療を進めている。

2003年5月に厚生科学審議会生殖補助医療部会による報告書(精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書)が作成されたが、法律はいまだ成立していない。生殖医療に基づいて出産した場合、生まれてきた子と親との法的な親子関係が不安定になるケースもあり、弁護士からも「早急な見直しが必要だ」という声もあがっている。

(弁護士ドットコムニュース)

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