すでに死亡している女性になりすまして、インターネット上の会員制交流サイト(SNS)に書き込みをしたとして、大阪市の40代男性が11月30日、名誉毀損の疑いで逮捕された。
報道によると、男性は6〜8月の間、大阪市内で携帯電話などを使って、すでに亡くなっている女性になりすまし、わいせつ行為を好んでいるとの書き込みをしたとしている。女性の遺族からの相談で発覚し、男性は容疑を認めているという。
このニュースに対しては、「死者の名誉毀損って立件できるんか?」などの疑問も見られた。死亡している人について、名誉毀損が認められるのはどのような場合なのか。遺族は、死者の名誉を傷つけられたことを理由に、損害賠償を請求できるのだろうか。木村康之弁護士に聞いた。
●死者の名誉を害されたことだけを理由に損害賠償請求できない
「まず、死者について名誉毀損罪が成立するのは、生きている人の場合と異なり、虚偽の事実を摘示することによって名誉が毀損された場合に限られています(刑法230条2項)。また、損害賠償請求については、死者の名誉を害されたことだけを理由に、遺族が損害賠償を請求することはできないと考えられます」
木村弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。
「『死者の名誉が害された』という理由であれば、本来、損害賠償を請求すべきなのは名誉を毀損された死者本人であるはずです。しかし、民法の考え方では、死者に損害賠償請求権という『権利』が帰属することはない(死者には『権利能力』がない)とされているからです。
ただ、死者に対する名誉毀損行為の中には、死者の名誉を毀損すると同時に、遺族の名誉やその他の人格的利益を毀損するようなことも存在するはずです。
遺族が、死者に対する名誉毀損行為によって、死者の名誉だけではなく遺族の名誉も毀損された、あるいは遺族の人格的利益が侵害されたとして、名誉毀損行為をした者に損害賠償を請求することはできるでしょう」