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ミヤネ屋、ASKA容疑者「未発表曲」を無断公開、著作権法違反では?
ミヤネ屋のホームページより

ミヤネ屋、ASKA容疑者「未発表曲」を無断公開、著作権法違反では?

覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕されたASKA容疑者の未発表曲が、ワイドショー番組「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)で、ASKA容疑者に無断で公開されていたのではないかとして、インターネット上で物議を醸している。

11月28日放送の「ミヤネ屋」では、<ASKA元被告 逮捕へ>という情報を受けて、逮捕直前のASKA容疑者の話題が大きく取り上げられた。この中で、執行猶予中のASKA容疑者と連絡をとっていたという井上さんが、ASKA容疑者本人から昨年12月に送られてきた楽曲を公開した。

井上さんの説明によると、楽曲には「2020年東京オリンピックのテーマ」というタイトルがつけられていたという。司会の宮根誠司さんは「(今までのASKA容疑者の曲とくらべて)どちらかというと幻想的」と感想を述べた。井上さんも「きれいなメロディーですね」と付け加えた。

●ASKA容疑者「曲流したらダメだって」

番組終了後の午後4時ごろ、井上さんは逮捕直前のASKA容疑者に携帯電話をかけた。このときの通話の一部始終は、翌29日放送の「ミヤネ屋」で、あらためて取り上げられている。

この通話で、番組を視聴していたASKA容疑者が「公造さん、公造さん、曲流したらダメだって」とクレームを入れて、井上さんが「あれは逆に聞かせた方がいいかなと思ったんですよ」と受け答える部分があった。

2人の会話の内容からすると、井上さんは、ASKA容疑者に無断で楽曲を公開したことが推測される。このような状況を受けて、インターネット上では「勝手に流して大丈夫なのか」「法に触れないのか」といった批判の声があがっている。

はたして、未発表の作品を作者に無断で発表することは法的に問題ないのか。著作権法にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

●著作者人格権の侵害になる

「自分の未発表の著作物を公表するかどうか、公表するとして、いつ、どのようなかたちで公表するかということは、著作者自身が決定することができます。これを『公表権』といいます。

公表権は、厳密にいえば『著作権』と異なる権利ですが、著作者が作品を作ったときに『著作権』と同時に発生する『著作者人格権』に含まれる重要な権利です。

ですので、ASKAさんに無断で、彼の未発表曲を放送することは、『著作者人格権』の侵害になり、著作権法違反となります」

番組によると、ASKA容疑者は、事前に井上氏に未発表曲を提供していた。このことによって、楽曲はすでに「公表」されていたことにはならないのだろうか。

「ここでいう『公表』とは、『公衆』に提供・提示することをいいます。著作者が、個人的に数人に提供して、意見や感想を求めるような場合は、『公表』にはあたりません。

ですので、この楽曲がすでに『公表』されていたということにはなりません」

一方で、放送局は、JASRAC(日本音楽著作権協会)から包括的な利用許諾を受けていて、JASRACが管理する楽曲を自由に使用することができる。それでも、今回の放送での使用は、著作権法違反になってしまうのか。

「たしかに、放送局は、JASRACの管理楽曲の『著作権』については利用許諾を受けています。しかし、JASRACは『著作者人格権』(公表権)については関知していません。

ですので、無断で未発表曲を放送で使用することは、やはり『著作者人格権』の侵害になり、著作権法違反となってしまいます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

高木 啓成
高木 啓成(たかき ひろのり)弁護士 渋谷カケル法律事務所
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。映像・音楽制作会社やメディア運営会社、デザイン事務所、芸能事務所などをクライアントとするエンターテイメント法務を扱う。音楽事務所に所属して「週末作曲家」としても活動し、アイドルへ楽曲提供を行っている。HKT48の「Just a moment」で作曲家としてメジャーデビューした。Twitterアカウント @hirock_n

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