スマートフォン向けの超人気ゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)をめぐり、一部のユーザーが「一斉ログインしてシステム障害を発生させよう」とネット上で呼びかけ、騒動となった。
パズドラではこれまで、システム障害による不具合があるたびに、ユーザーに「お詫びアイテム」を無料で配布するのが慣例となっていた。今回の「一斉ログイン」の呼びかけは、この「お詫びアイテム」を獲得することを期待して、ユーザーたちが意図的にシステム障害を発生させようという狙いなのだそうだ。
運営元のガンホー・オンライン・エンターテイメントは公式サイトで「絶対に行わないで」と発表。ユーザーが意図的に不具合を生じさせた場合には「お詫び」はしないとしたうえで、悪質なものについては「法的措置」も検討するとしている。ノリで参加してしまった人もいただろうが、ツイッターなどで「攻撃」を呼びかけていたユーザーたちは、罪に問われたりしないのだろうか。岩永利彦弁護士に聞いた。
●犯罪になる可能性があるから、絶対にやめるべき
岩永弁護士は「いくつかのケースが考えられますが、どれも非常に深刻な事態になります」と注意を呼びかける。
まず最悪のケースから見ていこう。
(1)攻撃を呼びかけた結果、一斉ログインが起こり、本当にシステム障害まで発生してしまった場合だ。
「まず、一斉ログインをしたユーザー全員について『電子計算機損壊等業務妨害罪』(刑法234条の2第1項)が成立する可能性があります。また呼びかけた人も『教唆犯』といって処罰されます」
(2)一斉ログインはあったが、システム障害は起きなかったら?
「この犯罪に関しては、2011年から『未遂』も処罰されることになりました(刑法234条の2第2項)。未遂の教唆犯も処罰されます」
(3)「呼びかけ」はあったが、一斉ログインが起きなかった場合は?
「一斉ログイン行為が始まってすらいない(着手がない)ので、『電子計算機損壊等業務妨害』には該当しないでしょう。ただ、このような『呼びかけ』があった時点で、ガンホー側はサーバー増強や『一斉ログインをしないで』という広告を出すなどの対策をする必要があります。そうすれば通常業務に支障が出る。つまり、高い可能性で『呼びかけ』自体が『偽計業務妨害(刑法233条後段)』とみなされるでしょう」
つまりは、どのケースでも「刑法で罰せられる」可能性があるということだ。岩永弁護士はさらに、会社から多額の損害賠償請求が行われる可能性についても示唆する。
「例えば対策の一環として、ガンホー側が本来不要なサーバーを買わなければならなかった場合、その費用が考えられます。またこの騒動で新規の入会者が減ったり、また既存ユーザーがアクセスをためらって売上が減少したら、その分の金額を賠償請求される可能性があります」
たかだか「お詫びアイテム」のために、「犯罪」や「多額の賠償」といった危ない橋を渡るのは、とてもではないがわりに合わない。ここはゲーマーらしく、リスク自体をしっかり回避しておきたいところだ。