ネットオークションに福袋が「1円即決」として出品されていたが、商品説明には「1円ではありません。14500円です」などと書かれている――。こんなややこしい出品が今年の正月に「ヤフオク!」で行われ、物議をかもした。
出品者は、初売りの福袋をヤフオク!に出品した際、「即決価格」を「1円」と設定していた。これはシステム上、1円の入札があれば、すぐに落札が決まるということだ。一方で、「商品説明」の欄には「1円ではありません。14500円です。お気を付けください」などと、別の値段を提示していた。
なぜ、こんな「二重表示」をしていたのか。ヤフオク!では、出品者が落札手数料として、落札額の5.40%を支払うルールがある。そこで、手数料の支払いを免れるために「1円即決」ということにしたかったのではないか、という指摘がネットであった。
このオークションはその後「落札者の都合」で削除されたが、もしこのような出品に対して「1円」で入札したら、どうなるのだろうか。システム的には1円で落札できるはずだが、実際に1円で商品を手に入れられるのか。ネット上の消費者トラブルにくわしい高木篤夫弁護士に聞いた。
●「落札=契約成立」ではない?
「本件では、『インターネット・オークションでは、売買契約がいつ成立するのか』が問題となります」
高木弁護士はこう指摘する。契約成立は落札したときではないのだろうか?
「ヤフオク!をめぐる裁判で、名古屋高裁は2008年11月11日、『交渉の結果、合意が成立して初めて売買契約が成立したものと認めるのが相当』と判断をしています。
つまり、落札しただけでは契約は成立しない。契約が成立するには、別途の『合意』が必要だということです」
すると、今回のような出品のケースで、1円で入札し、そのまま落札したとしても、「1円での売買契約が成立した」とは言えないのだろうか。
「本件では、商品説明にあるとおり、出品者は明らかに『1円で売る意思』はないようです。つまり、落札者が1円で落札しても、その値段で取引するという合意があるとは言えませんし、名古屋高裁の考え方からも、契約成立とは言いにくいですね。
逆に、落札者が『1万4500円で買うこと』に同意して合意すれば、契約成立になるでしょう」
●オークションの規約に違反する?
落札しても「落札価格での契約が成立していない」というのは、オークションのシステムとしては分かりにくいのでは?
「ヤフオク!は落札後に出品者と落札者が連絡をとりあって合意することが前提の仕組みをとっています。ただし、出品者の禁止行為として『商品説明のなかで、表示価格より高い金額で取引を行う旨を記載すること』が禁止事項として定められています。今回の1円即決問題のような形で出品すれば、規約違反に問われる可能性が高いでしょう」
高木弁護士はこのように指摘していた。