他人に勝手に自分の名前や写真を使われて、フェイスブックで「なりすまし」のアカウントを作られたという西日本在住の女性が、「なりすました人」の特定に成功したことがわかった。女性は、なりすましによって名誉を傷つけられたとして、インターネットのプロバイダに「発信者情報」の開示を請求していたが、それが受け入れられたのだ。女性の代理人をつとめる清水陽平弁護士が1月9日、弁護士ドットコムの取材に対して明らかにした。
清水弁護士によると、昨年8月28日、東京地裁の開示命令によって、フェイスブック社がIPアドレスを女性側に開示した。さらに、インターネットにアクセスするためのプロバイダが1月7日、そのIPアドレスを使っていた人の「発信者情報(住所・氏名)」を開示した。翌8日、清水弁護士が開示情報の記載された文書を受け取った(写真/個人情報保護のため加工済み)。
清水弁護士によれば、フェイスブック社への請求でIPアドレスが開示されたケースはまだ日本で数件しかなく、そこから個人の特定までたどり着いたのは初めてという。
●交際しているかのような写真を投稿
プロバイダの情報開示で判明したのは、西日本に住む男性の住所・氏名だった。
今回の女性の「なりすましアカウント」は、あたかもその男性と交際をしているかのような文章や写真を、フェイスブックに投稿していた。なかには、女性の生足の写真や、体をさわっている写真など、女性と男性の「性的な関係」をにおわせるような内容も含まれていた。
清水弁護士は「なりすましアカウントの投稿は、女性に対する名誉毀損やストーカー規制法違反の可能性が十分ある内容だった」と指摘する。
●ストーカー被害に悩んでいた
女性は、この男性によるストーカー被害に悩んでいたという。警察などにも相談したが、「なりすましているのが誰か特定できないと、動きにくい」と言われたため、なりすました人物の特定を先に行うことにした。
相談を受けた清水弁護士はまず、東京地裁に対して、フェイスブック社に情報開示を求める申請をした。そして、裁判所の命令にもとづいてIPアドレスの開示を受けた後、インターネット・サービス・プロバイダと交渉し、発信者情報を開示するよう求めていた。その過程で、プロバイダが発信者本人に対して意見照会をした直後、フェイスブックの「なりすましアカウント」は削除されたという。
清水弁護士は「相談時点から『この人しかいないだろう』という状況で、実際、予想通りの結果でした。人物が特定できたことで、損害賠償請求の訴訟を起こすことができます。また、警察の対応も変わってくると思います」と期待していた。