「私は絶対、わいせつだとは思っていません」。わいせつ電磁的記録送信などの罪で起訴された芸術家「ろくでなし子」さんは12月26日、保釈が認められ、約3週間ぶりに「外の空気」を味わった。その夜、東京都内にある弁護人の事務所で記者会見を開き、現在の思いや留置場での生活について語った。
「逮捕は2回目だったので、前回のように不安はなく、逆に怒りのほうが強かったです。(データや作品を)私は絶対、わいせつだとは思っていませんので、勾留がどんなに長引いても戦い続けるつもりでした。取り調べがすごく長時間続いて辛かったんですけれども、意志を貫いてきました」
ろくでなし子さんは逮捕以来、一貫して「わいせつではない」と供述しているが、会見でもあらためて「無罪」を主張した。
●「昨日言ったことと違うね」とチクチク責められた
会見では、12月3日の逮捕から保釈まで20日以上に及ぶ「勾留生活」の一端も明かされた。その間、一番辛かったのは、「長時間にわたる取り調べで、同じことを何度も何度も聞かれたこと」だという。
「今回は勾留がとても長く、ほとんど毎日のように警察が来たので、辛かったです。『何をどうした』という細かな事実関係は争っていないのに、それについて同じことを何度も何度も聞かれて、ほんのちょっとでも違うことを言うと『昨日言ったことと違うね』とチクチク責められました。
また、調書に自分が言ってないことを書かれないようにするのが大変でした。まるで私が言ったかのように書いてあるフォーマットを、勝手に作って持ってくるんです。その内容について、『こんなことは言っていません』と消したり、自分の言葉に直してもらったり・・・8割ぐらいは、それでした」
●5人部屋なのに「ボールペン」は1本だけ
そのような辛い勾留生活を、どうやって耐えていたのか。
「文章を書いたり、マンガを描いたりしていました。スケッチも描きました。ノートの半分ぐらいに、自分の中で印象深かったシーンを、絵日記みたいに・・・。それは、あらためて作品として、マンガにしたいと思います。
ただ、(7月に逮捕された際の)湾岸署にいたときは結構自由に書けたんですけれども、今回勾留されていた警視庁西が丘分室のやり方では、5人部屋の中にボールペンを1本しか入れられないんです。
5人が順番に書かないといけないので、ちゃんとやらないと、ケンカになるんですね。しかも、手紙を書ける時間は午前10時から午後3時までと、短い時間でした。私は午前も午後も取り調べをされていたので、なかなか時間が取れなくて、スキマの時間に必死で書いていました」
ろくでなし子さんがこう説明すると、記者からは「そんなルールでは、(取り調べ内容や弁護人との会話をメモする)被疑者ノートもろくに書けないのでは?」といった疑問の声があがった。
「被疑者ノートは、19時30分ごろまでは書かせてもらえるんですが、部屋に5人いるので、それも順番です。
あと、新聞とボールペンを同時に部屋に入れてくれないんですね。つまり、誰か一人でもボールペンを使っているときは、新聞を読めないんですね。だから、個人の自由でずーっと書いているわけにはなかなかいかなくて、とても不自由をしました。
また、被疑者ノートも、最初は私のロッカーではなくて、別の場所に持っていかれていました。弁護士の先生に言っていただいて、やっとロッカーに置いてもらえるようになったんですが、とてもストレスでした」
●自分が被告人という立場で「法廷マンガ」を描きたい
記者やカメラマンが待つ会見場に、「ピンクのワンピースに白い帽子」という姿で現れたろくでなし子さん。服装について問われると「(留置場の)部屋のなかでは、ねずみ色のトレーナーとかだったので、明るい格好をしたいと思いました」と説明した。
今後の表現活動については「変わらず作品を作り続けていきたいです。せっかくなので、自分が被告人という立場での『法廷マンガ』を描きたいと思っています」と話した。
会見が行われたのは、世間的には仕事納めの夜だ。「年の瀬でもあるが、これから家に帰って何がしたいですか?」と記者から問われると、ろくでなし子さんは「お酒が飲みたいです。日本酒とワインですね」と、にっこりほほえんでいた。
会見のノーカット動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=cchBr0Z8LAc