米アップルのクラウドサービス「iCloud」が不正にアクセスされ、米国の有名女優やモデルのヌード写真などのプライベート画像が流出したと報じられ、世界的な話題になっている。
報道によると、写真は匿名掲示板「4Chan」に投稿され、ツイッターなどのSNSで拡散しているという。流出した女優の代理人は、「目にあまるプライバシーの侵害だ。当局はすでに調査中で、犯人には法的措置で対抗する」と主張している。
こういった画像を不正に入手して流出させたり、流出した画像をSNSで拡散させたりすることには、どんな法的問題があるのだろうか。インターネット上のトラブルにくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
●プライベート画像の流出は「名誉毀損」
「iCloudは、AppleIDでサインインして利用するサービスです。今回の問題では、第三者が不正にアクセスして取得したデータを、インターネット上に流出させたことが問題になりました」
不正にデータを取得したことに、どんな法的問題があるのだろうか。
「アクセス権がないのに、勝手にログインをして情報を抜き取ったということになります。日本で同じことをすれば、不正アクセス禁止法に抵触することになります。不正アクセスをした場合は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金とされています(同法11条)」
では、プライベート写真を流出させたことには、どんな問題があるのか。
「今回は、ヌード写真などのプライベート画像が流出しているようですが、このような画像は公開を予定していたものではなく、他人に見られたくないものであることは言うまでもありません、
そういった画像を勝手に公開することは、日本では名誉毀損にあたります。流出させたのはその不正アクセスをした人物と思われますので、この人物が名誉毀損罪に該当することになります」
●SNSでの拡散も「不法行為」にあたる
今回は、流出したとみられる画像がヌード写真だったことが大きな問題になっている。
「ヌード写真に性器が写りこんでいるような場合、日本ではその画像はわいせつ物にあたると評価でき、わいせつ物公然陳列罪などにあたるでしょう。
また、プライバシーや名誉を侵害する画像をインターネット上に流出させる行為は不法行為であると評価できるため、民事上の損害賠償責任を負うことにもなります」
さらに、今回は、SNSで画像が拡散したことが問題になった。拡散させることにどんな問題がありうるのだろうか。
「SNSなどでヌード写真を拡散させることについては、拡散することにより新たな侵害を生むことになるため、拡散行為自体を不法行為ととらえることができると思います。
そのため、理論的には拡散行為をする者についても、名誉毀損罪やわいせつ物公然陳列罪などの適用が可能でしょう。また、民事上の損害賠償責任も負うことになります。
『インターネット上にある情報をもとにSNSで情報発信しただけ』という言い訳は、法的には通じません。安易に拡散に協力することは避けるべきです」
このように清水弁護士は、ネット上の「拡散行為」について警告を発していた。