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なくならないネットの誹謗中傷、裁判になっても「慰謝料」相場が低いワケ
(【IWJ】Image Works Japan / PIXTA​​)

なくならないネットの誹謗中傷、裁判になっても「慰謝料」相場が低いワケ

この数年大きな社会問題となっている誹謗中傷。有名人が法的措置をとると表明することも増え、その言葉は広く知られるようになりました。

しかし社会的にも問題視される中、被害はなくなりません。東京五輪をめぐっても、選手に対する誹謗中傷がSNSで書き込まれ、警視庁も対応を検討していると報じられています。

こうしたデマや誹謗中傷は、もちろん法的責任も問われます。2017年に起きた東名高速のあおり運転事故では、デマを書き込んだ人物らが30万円の罰金(名誉毀損罪)となっており、民事訴訟も起きています。

また、2019年8月の茨城県守谷市の高速道路で起きたあおり運転事件では、事件と無関係なのに「同乗の女」というデマを流され、名誉を傷つけられたとして、東京都の女性が元愛知県豊田市議に慰謝料など110万円の損害賠償を求めて訴訟を起こし、33万円の支払いが命じられています。

●慰謝料相場はなぜ低い?

2021年4月にはプロバイダ責任制限法が改正されるなど、被害者の手続き負担は軽減される方向にむかっていますが、こうしたネットの名誉毀損事件の慰謝料額が低いことが問題となっています。

プロレスラーの木村花さんの母・響子さんも、花さんの死後にツイッターで中傷した男性に129万円の損害賠償が命じられた訴訟の判決後、「精神的な苦痛に対する慰謝料の相場がとても低いことはすごく問題であると思っている」と訴えています。(https://www.bengo4.com/c_23/n_13075/

なぜ慰謝料が低いのか。その理由について、櫻町直樹弁護士はこう話します。

「芸能人など広く知られている人物への名誉毀損については、慰謝料が高額になることもあり、たとえば、著名な女優に対する名誉毀損のケースで、慰謝料500万円を認めたものがあります。

ただ、​​被害者が一般の方で、匿名での投稿が可能な電子掲示板については、投稿された記事に対する信頼度が低い(真実と受け止められる可能性が低い)と考えられていることもあり、慰謝料の額は低くなる傾向にあるといえます。

新聞や雑誌など、内容についての真実性が一定程度担保されている媒体とは、信頼度が異なるということですね」

今後、名誉毀損における慰謝料額は上がっていくのでしょうか。櫻町弁護士はむしろ「近年​​名誉毀損における慰謝料が高額化する傾向に歯止めがかかっている」という。

「2001年には東京地裁の研究会が『マスメディアによる名誉毀損訴訟の研究と提言』を公表し、名誉毀損における慰謝料はもっと高額であるべきという提言をおこなったこともあり、一時期、名誉毀損における慰謝料が高額化する傾向にありましたが、最近は低額化している印象があります。

最近は一般人が匿名の第三者から名誉毀損の被害を受けるケースが増えていますが、先ほども述べた通りそうしたケースではあまり高額な慰謝料が認められない傾向にあり、それが全体に影響して相場を押し下げている一つの理由ではないかと思います」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

櫻町 直樹
櫻町 直樹(さくらまち なおき)弁護士 内幸町国際総合法律事務所
石川県金沢市出身。企業法務から一般民事事件まで幅広い分野・領域の事件を手がける。力を入れている分野は、ネット上の紛争解決(誹謗中傷、プライバシーを侵害する記事の削除、投稿者の特定)。

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