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【新・弁護士列伝】4連続無罪判決獲得の弁護士が「わかりやすさ」を追求する理由 髙橋裕樹弁護士インタビュー

【新・弁護士列伝】4連続無罪判決獲得の弁護士が「わかりやすさ」を追求する理由 髙橋裕樹弁護士インタビュー

弁護士ドットコムニュースでは、一般の方々に弁護士をもっと身近に感じていただくために、学生による弁護士へのインタビュー企画をおこなっています。

今回お話を伺ったのは、髙橋裕樹弁護士(アトム市川船橋法律事務所)です。2016年に裁判員裁判で4連続無罪判決を獲得するという実績を持つ高橋弁護士。メディアやSNSを通じた情報発信にも積極的で、YouTubeでは「弁護士高橋裕樹のリーガルチェックちゃんねる」を開設し、法律解説の動画を配信されています。

インタビューでは、弁護士を目指したきっかけや、4連続無罪を勝ち取れた理由、動画作りへのこだわりなどについて、お話いただきました。

「弁護士になって身近な人を助けたい」

-弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。

もともとは理系で、子どもの頃から「医者になれ」と親から言われて育ちました。文系に転じた理由は、歌手の森高千里さんのファンだったからです(笑)。「作曲家になれば森高さんとお近づきになれるかもしれない。芸大を受験しよう!」と考えて、進路選択で文系を選びました。

ところが、高3の進路相談で芸大受験の決意を語ったら、学校の先生にも家族にも「作曲は趣味でやりなさい」と猛反対されてしまって。今さら理転して医学部を目指すのは難しいと思い、文系で一番難易度が高そうな法学部を受験しました。

弁護士になろうと思ったのは、親族が借金苦で体調を崩してしまったことがきっかけです。実際には500万円以上の過払い金が発生していたのですが、法的な知識のない親族は、何も知らず必死に返済していました。その姿を見て、「法律を知らないのはまずい」「弁護士になれば身近な人を助けられる」と思ったんです。就活に身が入らず、家族に「就職する代わりに司法試験を受ける」と宣言してしまったことも理由の1つなのですが。

-弁護士として心がけていることは何ですか?

相談者や依頼者の方とのコミュニケーションでは、難しい言葉を使わないこと、話の内容を理解してもらうこと、争いになった場合のリスクを知ってもらうことを意識しています。

こちらから提案する解決策に対して、適切な選択をしていただくには、まず、私の話を理解し納得してもらうことが必要です。難しい法律の話をしても何となくわかった気になるだけで心から納得してもらうことができないので、できるだけ噛み砕いて説明することを大切にしています。

-注力分野と、注力している理由を教えてください。

世の中のあらゆるニーズに素早く対応することが弁護士に必要なスキルだと思うので、特定の分野には注力していません。

ただ、刑事事件は、どんな世の中になっても一定のニーズがあるでしょうし、弁護士として必要な能力だと思うので、常にスキルを磨いていきたいです。

-どのような相談が多いですか?

離婚、相続、お金のトラブルが多いです。2020年はインターネット上の誹謗中傷の相談も増えました。まさに、世の中の変化に伴って生じたニーズですね。私が弁護士登録をしたのは10年以上前ですが、当時はインターネットの誹謗中傷の相談なんて1件もなかったので。

裁判員裁判で4連続無罪を獲得

-弁護士として活動してきた中で、一番印象的だったエピソードを教えてください。

弁護士1年目に、17歳の少年が父親を刺殺した事件を担当したのですが、起訴されてすぐに、少年が原因不明の病で亡くなってしまったんです。

彼とは何度も面会を重ねていて、葬儀では泣いてしまいました。彼に寄り添えていたのか、と後悔するとともに、相談者や依頼者の方との距離の取り方についても考えさせられました。弁護士として冷静に仕事をしていくためには、相手に感情移入しすぎず、どこかで一線を引くことも必要だと思ったエピソードです。

-髙橋弁護士は弁護士人として、裁判員裁判で4連続無罪を獲得されています。裁判員裁判で無罪判決を獲得することは、一般の刑事裁判と比べて難しいのですか?

どちらが難しいか、一概には言えないです。事件の内容にもよると思います。

裁判員裁判特有の難しさとしては、裁判員の方へのプレゼンテーション技術が必要な点が挙げられます。

裁判員裁判は、裁判員として選ばれた一般の方の感覚を取り入れることで、裁判官の凝り固まった考えや判断に風穴を開けるという側面があります。法律に詳しくない裁判員の方が、事件の内容や争いになっている点を理解するには、弁護士のわかりやすい説明が不可欠です。

法律用語を並べて複雑な説明をしても、裁判員の方は理解できません。特に重要なポイントに絞って、裁判員の方がイメージしやすい言葉や表現を使いながら、なぜ無罪だと考えるのか説明する。弁護士の腕の見せ所です。

裁判員裁判は、被告人の人生がかかったプレゼンテーションです。弁護士としてプレッシャーも感じますが、だからこそやりがいがあり、スキルアップし続けようと思えます。

-なぜ、4連続で無罪判決を獲得できたと考えていますか?

運と鍛錬だと思います。

引き当てた事案がよかったことは理由の1つですが、運だけでは4連続無罪という結果は得られなかったでしょう。

弁護士の実力は、無罪になってもおかしくない事案が手元に来たときに、確実に無罪にできるかどうかに現れると思います。黒の事案を無理やり白にするのではなく、目の前にあるグレーの事案を白よりのグレー、もしくは白にするプレゼンテーションや準備ができるかが大事です。

「無罪にできるな」と思った事案に対してフルパワーで取り組んだことが、よい結果につながったのだと考えています。

YouTubeで法律解説「日本中から相談が来る」

-YouTubeで法律解説のチャンネルを開設されています。動画を撮り始めたきっかけを教えてください。

弁護士がYouTubeで情報発信することが当たり前の時代が来るだろうな、と思ったことがきっかけです。

今はちょうど、その過渡期だと思います。時代の流れに気が付いていない人たちよりも早く参入すれば、認知度アップのために高い効果が見込めると考えて、撮影を始めました。

これは、過去の経験から得た教訓でもあります。弁護士登録して間もない頃、当時所属していた事務所でホームページを作りましょうと提案したんです。今は多くの法律事務所がホームページを持っていますが、当時はホームページがある方がマイノリティー。猛反対されて、実際に作るまでに5年くらいかかりました。

その間に、他の大手事務所がホームページを作って集客するようになりました。後から参入しても、先発組とはすでに大きな差がついています。「もっと早く作っていれば…」と後悔しました。同じ轍を踏まないためにも、YouTubeにはいち早く参入しようと思ったんです。

一番多く見られている動画は20万回以上再生されています。題材選びのコツは、どんな話題がバズっているか、常にセンサーを張り巡らせておくこと。1日に何度もYahoo!のトップやTwitterのトレンドをチェックしています。視聴者の方が題材を提案してくれることもあります。

-YouTubeの撮影が実務に役立つと感じることはありますか?

沢山あります。特に、弁論活動のトレーニングとしては最適です。動画で心がけているのは、わかりやすく、テンポよく話すこと。これは裁判のプレゼンテーションでも必要なスキルです。

動画を撮って自分の話し方を客観視することで、「裁判でもこんなふうに話していたのか」と反省し、改善できました。

ちなみに、寝不足で撮影すると話すテンポが明らかに悪くなります。「裁判でプレゼンテーションする前日はしっかり寝るべきだ」と気づけたのも、YouTubeのおかげですね。

YouTubeを始めたことで、日本中から相談のお申し込みをいただくようになりました。遠方の場合は、頻繁に現地に行かなくても対応できる案件に絞って、オンラインで相談を受けています。たとえば、交通事故、相続、会社の倒産関係などの案件です。

-休日はどんなふうに過ごしていますか?

釣りとキャンプ、娘と公園に行くことです。コロナ禍で外出しづらくなってからは、ベランダにテントを張ってベランピングをしたり、七輪を買って焼肉をしたりして、家で過ごす時間を楽しんでいます。

-今後の展望を教えてください。

「YouTubeの登録者数10万人突破」、「2年に1度は無罪を取る」、「事務所の売上げの右肩上がりを維持」ですね。売上げはコロナ禍でも下がらなかったんです。YouTubeで認知度を上げられたおかげだと思います。

-法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。

悩んでいる時間がもったいないので、弁護士に相談したほうがいいのかなと思った瞬間に、法律事務所に電話をしてください。お腹が痛い、肩が痛いと思ったら病院に行くように、少しでも「あれっ?」と思ったら、とりあえず弁護士に相談してほしいです。

「弁護士に相談するほどではないだろう」と甘く見たり、インターネットや知人の情報を信用したりして、人生が狂ってしまった人を、私たちは散々見てきました。抱えている問題の深刻度を自分で推し量るのではなく、弁護士に判断を仰いでください。

オンラインで相談できる事務所もあれば、無料相談を受け付けているところもあります。弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」を活用してもよいでしょう。1回相談をして納得できなければ、他の弁護士にセカンドオピニオンを求めればいいんです。ぜひ、気軽に弁護士に相談していただければと思います。

プロフィール

髙橋 裕樹
髙橋 裕樹(たかはし ゆうき)弁護士 アトム市川船橋法律事務所
無罪判決多数獲得の戦う弁護士。依頼者の立場に立って、徹底的に親切に、誰よりも親切でスピーディな、最高品質の法的サービスの提供をお約束!でも休日は魚と戦う釣りバカyoutuber弁護士! (https://www.youtube.com/channel/UClg_UagOk4xl9OXpILDc4Fg)

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