Twitter、Facebookやmixiなどのソーシャルメディアの普及に伴い、いま自分が何をしているのか、あるいはどこにいるのかをインターネット上で多数の人に発信する人が増えている。しかし、その一方で有名人のプライベートを晒すような情報までもが発信されてしまい、大きな騒動に発展したケースも少なくない。有名人を目撃して興奮する気持ちそのものは否定できないが、場合によっては違法行為になる可能性があるので、ソーシャルメディアで有名人に関する情報を発信する場合にやってはいけないことをまとめておきたい。
多くの人々にとってまだ記憶に新しいと思われるのは、サッカー女子日本代表の熊谷紗希選手がワールドカップからの帰国直後に参加した飲み会で、同席した男子大学生に熊谷選手が監督批判などの発言をしているかのような内容をTwitterでつぶやかれた騒動だ。この他にも有名タレントが宿泊したホテルの従業員が宿泊後の部屋の様子をTwitterに投稿したり、有名タレントが来店したことを店員がTwitterで実況するなどの騒動がたびたび発生している。
ソーシャルメディアで有名人に関する目撃情報を発信する場合、どのような内容だと違法行為になる可能性があるのか。ネットビジネスや知的財産権に詳しい福井健策弁護士に聞いた。
「目撃情報では、プライバシー侵害の有無が問題になります。どこまでの情報をプライバシーの範囲に含めるか判例は移り変わっていますが、『通常は人に知られたくないと思われる他人の行動を、特定可能な形で一般に公表する』場合には、違法の可能性があるので注意しましょう。」
「特に病院や非公開の場所での目撃など、私的かつ繊細な内容の目撃情報を発信することは避けるべきです。投稿した方が当該施設の従業員だった場合などは、責任は重くなりやすいでしょう。また、フォロワー数や友人数の多い方は、より慎重さが求められるように思います。」
例えば有名人がある飲食店を訪れた場合に、その本人が来店したことだけをソーシャルメディアに投稿する場合と、同伴している人がいることも含めて投稿する場合は、基本的には後者の方がプライバシー侵害の違法性が高くなる。ただし、同伴している人が恋人と思われる人物の場合と、本人同意の上と思われる取材中のテレビ局スタッフの場合であれば、前者は違法性がより高まるが、後者の場合は本人が知られたくない行動だとは見なしにくく、違法性は低くなるであろう。このようにその有名人が具体的にどのような状況にあるかによって違法性は異なるということだ。
とはいえ、個別の状況に対する違法性について一般人が判断することは難しい。その有名人が公表している本業とは関係ない状況にいると思われる場合は、目撃情報をソーシャルメディアに投稿することは止めておいたほうが良いだろう。
ちなみに、週刊誌などの有名人のプライベートスクープ記事も上記と同様の基準で違法になる可能性があるが、違法なものを含めて大半の記事は、スクープされた側が有名になったことの代償として諦めるなどの理由で提訴に至っていないのが現状のようだ。
簡単な操作で多くの人と情報を共有できるのはソーシャルメディアの魅力だが、例え悪意がなかったとしても結果として思わぬ騒動を起こしてしまわないように、どのような場合に違法性のリスクがあるか、正しく理解しておきたい。