自動車の交通事故が減少するのにともない、「自転車」の交通事故に目が向けられるようになった。警察庁のデータによると、2012年におきた自転車の交通事故は約13万件。そのうち9割は自動車やバイクとの接触事故だが、歩行者との衝突事故も2625件あり、うち5件は死亡事故となっている。
このような状況を受け、警察庁は、自転車が通行できる歩道のうち、道幅が3メートル未満の狭いところは、子どもや高齢者などを除き、自転車での走行を徐々にできなくする方針をとっているという。NHKの報道によると、全国の警察が「自転車通行可」の標識を取り外した歩道は、2012年の1年間で516カ所、その距離は356キロに達したということだ。
自転車は車道を走るのが原則とされている。たしかに交通ルールを守ることは重要だが、自転車レーンの設置も十分とは言えない現状では、常に車道を走行するというのは難しいのではないだろうか。もし自転車で歩道を走ったら、罰せられるのか。万が一、歩道で接触事故を起こしてしまったときの罰則はどのようになるのだろうか。西尾有司弁護士に聞いた。
●自転車は「車道を走る」のが原則だが、例外もある
「自転車は、法律上は、自動車などとともに『車両』と区分されており、原則として、車道を走らなければならないことになっています(道路交通法17条1項)」
このように、西尾弁護士は「交通ルールの原則」を示す。だが、「例外も多く認められています」という。具体的には、次のような例外があるという。
「(1)道路標識等により、歩道を走行することができるとされている場合
(2)政令により、児童、幼児、70歳以上の高齢者、一定程度の身体障害者など車道を走行することが危険である者と定められている者が自転車を運転している場合
(3)車道や交通の状況に照らして、自転車の走行の安全を確保するために歩道を走行することがやむを得ないと認められる場合
これらの場合には、歩道を走ることができるとされています (道路交通法63条の4第1項)」
そして、歩道の通行が許されていないにもかかわらず、自転車で歩道を走行した場合は、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金となる可能性があります(道路交通法119条1項2号の2)」ということなので、注意が必要だ。
●自転車に乗っていて歩行者をケガさせたら、重過失致死傷罪の可能性も
では、歩道を自転車で走行しているときに、歩行者などと接触事故を起こしてしまったら、どうなるのだろう。
「歩道にかぎらず、自転車で走行中、歩行者や自転車との接触事故を起こした場合、相手がケガをさせてしまえば過失傷害罪(刑法209条1項)、相手が亡くなってしまえば過失致死罪(同法210条)に問われる可能性があります。
さらに、自転車の運転者に重大な過失があるという場合には、重過失致死傷罪(同法211条1項後段)の可能性もあります。重過失致死傷罪に問われた場合には、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となる可能性があります。(同条項)
また、過失の程度の判断の際には、当然、自転車で走行してはいけない歩道であるか否かも考慮されますので、注意が必要です」
結局のところ、自転車は歩道を走っていい場合、走ってはいけない場合の両方があるということだ。また、違反すればペナルティーもあるということなので、注意が必要だ。歩道を走ってよいかは、標識の有無や車道の状況をみながら適切に判断すべき、といいたいところだが、それは案外、難しいかもしれない。やはり、自転車レーンの整備や明確な標識の設置が望まれるところだ。