梅雨のシーズンが近づいてきたが、雨が降っているときは、徒歩ではなくタクシーに頼りたくなるものだ。タクシーといえば、最近は、後部座席に乗ったときに「シートベルトをしめてください」と言われることが多くなった。
運転手に直接言われることもあれば、自動音声が告げることもある。あるいは、音声ではなく、ドアの内側に貼られたステッカーで「シートベルトの着用」をうながしている場合もある。これは、2008年から、後部座席の乗客もシートベルトを着けなければいけなくなったためだ。
しかし、タクシーの乗客のなかにはシートベルトの着用をわずらわしいと感じる人も多いだろう。もし法律にしたがわないで、シートベルトをしめなかったら、乗客や運転手に何かペナルティがあるのだろうか。道路交通法にくわしい池田毅弁護士に聞いた。
●同乗者がシートベルトを着けないと、運転手に「違反点数」がついてしまう
「運転手は車を運転するとき、運転手自身はもちろん、同乗者にもシートベルトを装着させる義務があります」
このように池田弁護士は、運転手の義務について説明する。
「運転手がシートベルトを着用せずに運転すると、違反点数がついてしまいます。また、一般道では助手席の乗員、高速道路などではそれに加えて後部座席の乗員がシートベルトをしていない場合も、やはり運転手に違反点数がついてしまいます」
では、運転手ではなく、同乗者についてはどうなのか。シートベルトを着けないと「違反点数」がつくのだろうか。
「同乗者については、シートベルトを装着していない場合に、罰金を課せられたり、違反点数がついたりということはありません。ですから、現時点はタクシーの後部座席に乗ってシートベルトを装着しなかったからといっても、乗客には何らおとがめはありません」
●乗客にはペナルティはないけれど、シートベルトを着けたほうがいい
つまり、タクシーの運転手とは違って、乗客にはペナルティがないというわけだ。しかし、それでも、「シートベルトを着けたほうがいいですよ」と池田弁護士はアドバイスする。
「交通事故が起きた際には、シートベルトを装着しているほうが怪我の程度の少ないことがほとんどで、それは後部座席でも同じです。さらに後部座席の場合は、前席にとびこんで、前席の運転手等に怪我をさせる危険性もあります。
また、シートベルトを装着していないことで怪我の程度が拡大した場合には、その部分は、加害者に賠償請求できない危険性もあります。
ですから、自分の体を守るためには、タクシーの後部座席に座ったときでも、シートベルトを必ず装着すべきです」
タクシーの運転手から「シートベルトの着用」をうながされたとき、つい「うるさいなぁ」と思ってしまう人もいるだろうが、それは結局、乗客である自分のためなのだ。いつ事故にあうかもしれないのだから、万が一のときに備えて、できるだけ運転手のススメにしたがっておくのが賢明だといえるだろう。