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<池袋暴走事故>運転手「てんかん」の持病があるのに薬飲まず・・・罪に影響する?
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<池袋暴走事故>運転手「てんかん」の持病があるのに薬飲まず・・・罪に影響する?

東京・池袋の繁華街で8月16日午後9時半ごろ、歩道に乗用車が乗り上げ、1人が死亡、4人が負傷する事故が起きた。運転していた男性(53)が自動車運転処罰法違反の疑いで逮捕・送検された。男性は「てんかん」の持病があることが報じられている。

報道によると、男性は大学生のころ、「てんかん」と診断されて、月1回のペースで通院していた。現在も、症状を抑える薬を服用しているという。ただ、男性は2013年に運転免許を更新した際、「てんかん発作」の経験があるという申告をしていなかった。

さらに、男性は1日2回、てんかんの薬を服用することになっていたが、この日は、朝は飲んだが、夕方は飲んでいなかったことを話しているという。薬を飲まなかったことが、罪にどう影響するのだろうか。交通事故の法律問題にくわしい宮田卓弥弁護士に聞いた。

●「自分でも危ないとわかっていたかどうか」がポイント

「病気の影響で、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、事故を起こして人を死亡させた場合、15年以下の懲役が科せられる可能性があります(自動車運転処罰法3条2項)」

宮田弁護士はこのように述べる。

「『自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気』の種類は政令で定められていて、『てんかん』も含まれています。

この規定が適用されるには、『病気』であることだけでは不十分です。さらに、次の要件が必要となります。

(1)病気のために正常な運転に支障が生じるおそれのある状態で、しかも、自分でそのことを分かっていながら運転をしたこと

(2)病気のために正常な運転が困難な状態になり、人を死傷させたこと

簡単に言えば、『病気の影響で、自分でも運転したら危ないとわかっていたのに、車を運転して事故を起こしてしまった』というケースです」

今回のケースはどう考えればいいだろう。

「医師の診断で、自分が運転中に危険な症状が現れる具体的なおそれがあることを分かっていて、薬を服用するよう指導されていたにもかかわらず、服用を怠って事故を起こしたといった事情であれば、『危険だと自分でもわかっていた』と認定できる可能性があるでしょう。

過去に発作を起こしたことがない人であっても、今後発作を起こす危険性があるとして、医師から薬の服用を指示されていたのに、これを怠ったようなケースも同様です」

では、免許を更新した際、「てんかん発作」の経験があるという申告をしていなかったことは、どう評価すればいいだろう。

「そうした事実は、『免許更新時に自分の『病気』の危険性を認識していたのだから、事故当時も認識していただろう』というように、間接的に、事故当時に自分が危険な状態だと認識していたことを推認させる事実にすぎません。

そのため、医師の指導を受けながら薬の服用を怠ることに比べると、重要とはいえません。ただし、免許更新時の虚偽申告自体は、道交法において処罰される可能性があります。」

●問題は、病気それ自体ではない

ネット上では、持病を持つ人に免許を与えることを禁止すべきだという声もある。

「問題は、『病気』それ自体ではありません

自動車運転処罰法は、運転するのに危険な状態にあることを自覚していながら、あえて自動車を運転するという、悪質で危険な行為を規制するものです。

てんかんなどの『病気』を患っている人が事故を起こしたとしても、周知の際にも誤解を与えないよう注意する必要があると思います。

処方された薬を適切に服用していたのか、『病気』と事故の間に因果関係はあるのか、こうした点を慎重に見極める必要があるでしょう」

宮田弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

宮田 卓弥
宮田 卓弥(みやた たくひろ)弁護士 弁護士法人たくみ法律事務所
福岡県弁護士会所属(2002年弁護士登録)。福岡を中心に九州の被害者の交通事故事件を多数扱う。特に、事故直後から後遺障害の賠償に力を入れている。

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