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自転車の「傘差し運転」は違法なの?大阪では目撃情報が複数…弁護士の見解は
写真はイメージ(田上稜 / PIXTA)

自転車の「傘差し運転」は違法なの?大阪では目撃情報が複数…弁護士の見解は

ある雨の日、東京都内のIT企業に勤めるアカリさんが歩いていると、ビニール傘をハンドルに装着した自転車がスーッと横切っていった。「違法なのでは?」という疑問が浮かんだが、大阪では雨天時だけではなく日差しが強い日も「自転車の傘差し運転を見た」との目撃情報が複数あがっている。

そもそも、違法なのだろうか。地域によって、ルールが違うのだろうか。

●都道府県によってルールは異なる?

交通問題にくわしい平岡将人弁護士は「傘差し運転は規制されているが、その仕方は、都道府県によって異なる」と説明する。

「道路交通法71条は、車両等の運転者が守らなければならないルールを定めています。なお、自転車も『車両等』に含まれています。これは全国共通です。

同法では『道路または交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項』も守らなくてはならないとされています。道交法で定めきれない地域に合ったルールを各都道府県が独自で定めようというものです」

東京都の場合、東京都道路交通規則8条3号で以下のように規定されている。

【東京都道路交通規則8条3号】
傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、または安定を失うおそれのある方法で、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車または自転車を運転しないこと

「東京都では、傘を差して自転車を運転した場合、道路交通法71条6号に違反することになります。違反した者は、5万円以下の罰金に処せられます(120条1項10号)」

●傘ホルダーを使うのもダメ?

傘差し運転の目撃情報が複数ある大阪府の道路交通規則でも、東京都と同じように傘を差して自転車を運転しないこととされている(13条)。11条4号には「積載物」の長さ、幅、高さを規定する文言もある。

平岡弁護士によると、規則で禁止されているのは「傘を差したり、物を担いだり持ったりして視野を妨げるなど、安定を失うおそれのある方法で自転車を運転すること」だという。

では、傘ホルダーなどの器具で固定しながら運転することはルール違反となるのだろうか。

「手に持っていないとはいえ、雨を防ぐという傘の用法通りの使用をしているため『傘を差して』にあたるといってもよいでしょう。傘が風に押されたり、壁などに接触したりして自転車がバランスを崩すことはありえますので『安定を失うおそれのある方法で』運転していることは間違いありません。

仮に、手で持っていないために『傘を差して』にあたらないと考えるとしても『傘を差し、物を担ぎ、物を持つ』の『等』にあたると考えられます。したがって、器具で固定したとしても、傘差し運転だといえるでしょう」

●東京でも大阪でも傘差し運転は「違法」

傘は道交法で規定されている「積載物」の要件を満たしていない可能性もあるという。

「車両を運転する際に、荷物は『積載のために設備された場所(積載装置)』に積まなくてはならないとされています(道交法55条1項)。自転車の場合、たとえばカゴがこれにあたります。

積載物や積載方法についてもルールが定められています。道交法では軽車両の積載重量等の制限について定めることができるとされており、たとえば東京都交通安全規則10条には、以下のようなさまざまな規定があります。

【東京都交通安全規則10条】
長さ:自転車にあってはその積載装置の長さに0.3メートルを加えたもの
幅:積載装置又は乗車装置の幅に0.3メートルを加えたもの(3項ア・イ)
積載方法:左右 自転車にあってはその積載装置からそれぞれ0.15メートルをこえてはみ出さないこと(4項イ)
など

以上の規定からすると、ホルダーなどの固定器具を積載装置と考えて、傘を『積載』して自転車に乗る場合、長さ、幅、積載方法の制限に引っかかり、積載できないと考えられます」

固定器具はインターネット上でも販売されている。平岡弁護士によると、違法なのは販売することではなく「ホルダー固定を含む傘差し運転」だという。

「東京でも大阪でも傘差し運転は違法になります。自転車を運転するならば、ほかの交通者の安全を守らなくてはなりません。雨の日は自転車に乗らないか、濡れるのを覚悟して雨合羽を着ることにしましょう」

プロフィール

平岡 将人
平岡 将人(ひらおか まさと)弁護士 弁護士法人サリュ銀座事務所
中央大学法学部卒。全国で10事務所を展開する弁護士法人サリュの前代表弁護士。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「交通事故案件対応のベストプラクティス」ほか。実務家向けDVDとして「後遺障害等級14級9号マスター講座」「後遺障害等級12級13号マスター講座」など。

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