都市部ではともかく、地方では居酒屋に行くにも自動車が必要になることがある。だからといって、飲み会で飲酒したあとに車を運転するのは、法律違反だ。そんなときのために、地方を中心に、運転代行(代行)というサービスが展開されている。
運転代行とは、お酒を飲んだ利用者に代わって、利用者の車を運転して、目的の場所まで送り届けるサービスだ。利用者は飲酒運転をせずに、自分の車で移動することができる。国土交通省によると、飲酒運転が厳罰化されて以降、代行業者の数が増えているという。
そんな頼もしい運転代行業者だが、交通事故を起こさないとは限らない。もし、運転代行業者が事故を起こし、利用者がケガをした場合は、きちんと業者に賠償してもらえるのだろうか。森越壮史郎弁護士に話を聞いた。
●通常は運転代行業者の「任意保険」でカバーされる
「運転代行業者は、『自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律』によって、認定を受けなければなりません。
この法律では、運転代行業者に、交通事故に備えた任意保険に加入することを義務付けています。加入すべき保険の額は、人的損害(利用者も含む)については1人あたり8000万円以上、物的損害(利用者の車も含む)については200万円以上とされています。
業者が払う保険料は補償額が無制限の場合でも大差ないでしょうから、通常は『対人・対物無制限』の保険に加入しているのではないかと思います。
したがって、通常のケースでは、運転代行業者が加入している任意保険で、すべてカバーできるでしょう」
そうなると、問題となるのは業者がルールに反して保険に入っていないような、例外的なケースといえそうだ。
●「随伴車の保険加入」が焦点となっている
森越弁護士によると、運転代行の賠償問題として、「随伴車」が事故を起こしたケースにも焦点があたっているという。随伴車とは、運転代行を終えた運転手が戻るために、運転代行車に付き従って走る車のことだ。いま何が、問題になっているのだろうか。
「問題となっているのは、随伴車については、法律上、任意保険の加入が義務付けられていないという点です。
随伴車による悲惨な重大事故の報道も見聞しますが、運転代行業者の方々には、随伴車についても充分な任意保険に加入していただき、その分はきちんと価格に転嫁していただきたいと思います。
昨年11月から始まった『優良運転代行業者評価制度』では、随伴車の任意保険加入や保険料の滞納のないことが、優良認定を受けるための要件となっています。利用者の方々には、運転代行業者がこの制度の認定を受けているかどうかを確認した上で、安心して利用することをお勧めします」
森越弁護士はこのように指摘し、運転代行の利用者へアドバイスを送っていた。