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保育所格差、「認可外」の質をどう向上させるか…法改正で事故時の公的補償の対象に
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保育所格差、「認可外」の質をどう向上させるか…法改正で事故時の公的補償の対象に

一定の基準を満たせば認可外保育施設でも事故時に公的補償が受けられるよう、「災害共済給付制度」を見直す議員立法が3月23日、衆院本会議で可決した。法案は参院に送付され、今国会で成立する見通し。4月1日から施行する予定だという。

改正となるのは「独立行政法人日本スポーツ振興センター法」。従来から、認可を受けた保育所は補償対象だったが、法改正で一部の認可外保育施設にも対象を拡大する。新たに対象となるのは、2016年度に導入された企業主導型保育所と、認可並みの設備を整えるなど一定の基準を満たす認可外保育施設。同制度では、子どもが保育所などの事故で怪我をしたり、亡くなったりした場合、加入している施設の保育士らの過失の有無に関わらず、医療費や見舞金が給付される。

報道によると、内閣府の調査では、15年に発生した保育施設での死亡事故14件のうち、10件が認可外保育施設で起きていたという。今回の法改正で、公的補償の対象に認可外保育施設が含まれたことをどう評価するべきか。大井琢弁護士に聞いた。

●「保育の量も質も共に確保していく対策が必要」

「そもそも、死亡事故を防止するためには保育士の数の配置や子供1人あたりの面積の確保が不可欠です。しかし、認可外保育施設では、これらの水準が、認可保育所に比べて低い水準にとどまっています。保育施設の死亡事故のうち、過半数が認可外保育施設で起こっているのは、このような状態にあることが1つの原因であると考えられます」

なぜ、低い水準にとどまっているのか。

「認可保育所には、市区町村の負う保育の実施義務(児童福祉法24条1項)に基づいて、法律で裏付けられた公費が委託費として投入されています。しかし、認可外保育施設には、そのような公費の投入が限られた形でしか行われていません。このような理由から、認可外保育施設においては、保育士の数の配置や、子ども1人あたりの面積の確保を十分にすることができる経済的基盤がないか、あるいは、不十分である施設が多く存在するのです。

現状は、認可保育所に通うことができる子どもと、認可外保育施設に通う子どもとが分断されてしまっているともいえます。命にかかわる保育事故を防止するために必要な保育の質が確保されていない保育施設に通わざるをえない子どもがいることは『法の下の平等』(憲法14条1項)に反すると言えるでしょう」

法改正で、公的補償の対象に認可外保育施設が含まれたことをどう評価するべきか。

「今回、認可外保育施設にも対象が広がった『災害給付制度』は、あくまで、保育事故による損害の一部を補償するものに過ぎません。しかも、『災害給付制度』自体は、死亡事故などの保育事故を防止するための制度とはいえません。

保育の必要な全ての子どもたちに対して、安心・安全な保育を受けられる権利を保障するためには、より根本的な対策、具体的には、公費を投入することによって認可外保育施設の保育の質を引き上げ、認可化するなどの対策が必要です。

この間、大きな社会問題となりながら、一向に解決が図られない待機児童の問題と併せて、保育の量も質も共に確保していく対策を取らなければ、日本の未来を担う『宝』であるはずの子どもたちや、子育て世帯にとって厳しい状況が続き、ひいては、日本の未来にも暗雲が立ち込めてしまうのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大井 琢
大井 琢(おおい たく)弁護士 そよかぜ法律事務所
そよかぜ法律事務所(沖縄弁護士会)弁護士、沖縄弁護士会貧困問題対策委員会委員長。保育を中心とした0~5歳児への早期支援によって子どもの貧困を解消できるとの信念のもと、保育や待機児童などの問題に取り組んでいる。

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