南太平洋の国サモアの航空会社が、ユニークな運賃体系を導入したと話題になった。この航空会社が採用したのは、乗客の体重と荷物の重さによって運賃を決める方式。乗客が太っていれば、それだけ運賃が高くなるというのだ。
旅客機の座席は通常、「ビジネスクラス」「エコノミークラス」といった等級に分けられており、その等級内では運賃が一律となっている。しかし航空機の燃費は積荷の重さによって変わるため、サモアの航空会社が採り入れた運賃の決め方は、理屈的には筋が通っているようにも思える。一方で、太っている乗客は「肥満税」を支払わされているようなものだと、同情する声もあるようだ。
航空機の運賃をめぐっては、ノルウェーの経済学者が「航空会社は肥満の乗客から追加料金を徴収すべきだ」という論文を学会誌に発表して話題にもなった。今後、日本でもこのような方式が採り入れられないとは限らないだろう。では、このような太っている乗客に不利な運賃システムが導入された場合、法的に問題はないのだろうか。中村憲昭弁護士に聞いた。
●公序良俗に反しないかぎり「運賃をどう決めようと構わない」のが原則
「体重を基準に運賃を決めることは可能です」
中村弁護士はこのようにキッパリと言う。
「運賃をどう決めるかは、航空会社と旅客との合意によります。合意といっても、実際には、航空会社が約款で一方的に契約内容を決め、それを国土交通省が認可するという形となっています。しかし、そもそもの原則としては、公序良俗に反しない限り、運賃をどう決めようと構わないのです」
では、体重別運賃は公序良俗に反しない?
「問題はないと考えます。宅配便だって荷物の大きさや重さで送料は変わります。航空も同じで、重いものを運ぶにはそれだけの手間や燃費がかかります。旅客についても、体重で運賃を決めるほうがむしろ合理的ではないでしょうか」
飛行機料金と体重にかかわる判例はある?
「アメリカの航空会社が、太った客に追加シートの購入を求めたところ、逆に訴えられたというケースがあります。しかし、これは航空会社側がチケット販売時には何の告知もせず、搭乗時に突然追加シートの購入を求めたため、問題となったようです。体重別運賃自体が否定された例ではありません」
中村弁護士は「世界基準で考えると、肥満者の多いアメリカやサモアと違って、日本人の多くはむしろ運賃が安くなってお得ではないでしょうか。ダイエットにも繋がり、一石二鳥・・・。さて、私も今のうちにダイエットに励みたいと思います」と話していた。
もし実際に導入されるとなれば、いつ、どんな形で体重を量るのか。計量前のボクサーのようにピリピリした人たちが、空港のカウンター前に並ぶ姿はぞっとしない。航空会社にはそういったことへの配慮をいろいろ考えてもらいたいものだ。