「同性カップル」向けに、公的な「パートナーシップの証明書」を出すという条例案を打ち出し、大きな注目を集めた東京都渋谷区の桑原敏武区長が3月23日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。桑原区長は、性的少数者の人権や多様性の大切さを強調し、「差別的な扱いをされている方にも、暖かい手をさしのべるべきだ」と語った。一方、区立公園から強制撤去させたホームレスについては「政治運動だ」と批判し、「わけのわからない主義主張のために譲歩することはない」と強硬的な姿勢をみせた。
●渋谷区の「多様性・寛容性」を強調
桑原区長は会見で、「渋谷は、他者を思いやり、尊重し、互いに助け合って生活する伝統と、多様な文化を受け入れ発展してきた。さまざまな個性を受け入れてきた寛容性の高いまちだ」と強調し、性的少数者の権利を守るために「パートナーシップ証明書」の条例が必要だと訴えた。
さらに、条例に対する反対意見について、記者から問われると、桑原区長は「法律があって事実があるのではなく、事実があって法があるんだと思う」と発言。「性的少数者であるために自己をありのままに表明できないで、差別的な扱いをされている方がいる。そういう事実がある。法は、そういう人たちにも等しく暖かい手をさしのべるべきだ」とした。
また、性的少数者が渋谷区に集まることを「歓迎する」と述べ、「反対派をひとつひとつ説得していきたいと思っている」と話した。
●区立公園の「ホームレス問題」については?
一方で、渋谷区は、区立宮下公園からホームレス男性を違法に強制退去させたとして、3月13日に、東京地裁から賠償金の支払いを命じる判決を受けた。また、年末年始などに公園を閉鎖しているとして、ホームレスの支援団体などから批判を受けている。
記者から、そうしたホームレスを排除するような対応は「思いやり、人権の尊重に矛盾しないのか」と問われると、桑原区長は「(年末年始の炊き出しなどは)政治運動だ」と切り捨てた。
また、「区長がいう多様性に、ホームレスの人たちは含まれないのか?」という質問に対して、桑原区長は「私どもの職員に聞いてもらえれば分かる。路上生活者については、自分たちが責任を持って保護し、適切に指導をしている」と回答した。
さらに、「あそこ(宮下公園)にはそういう(ホームレスの)人はいない。専門的にどこかから来る。そういう人たちが組織を持って、あそこにいらっしゃるのであって、これは、何かの政治運動に寄与するためにやっているのではないか。我々がやるのは、苦しんでいる人、助けを求める人、そのことについてはやぶさかではない。そうでない人にまで、わけのわからない主義主張のために譲歩することはない」と話した。
そして、東京地裁から敗訴判決を受けたことについて、桑原区長は「訴訟の運営の拙劣さからそうなったと思っている」と述べ、「当然のことながら、控訴をさせていただくという考え方だ」と表明していた。