川崎市で中学1年の男子生徒が殺害された事件で、逮捕された17~18歳の少年3人の取り調べが続いている。報道によると、3人は事件への関与を認める供述を始めているが、それぞれの供述にはズレがあり、警察は慎重に捜査を進めているという。
この後、少年たちにはどんな手続が待っているのだろうか。少年事件の場合、検察がいきなり起訴するわけではないようだが、具体的にはどうなっているのか。少年事件にくわしい本多貞雅弁護士に聞いた。
●検察官に「逆送」されるケースとは?
「14歳以上の少年、つまり『14歳〜19歳の少年』が警察に逮捕された場合、捜査段階では、成人の刑事事件と同じく、警察で取調べを受けることになります。
成人の場合は、その後、警察から検察に送致されて、『検察官』が起訴・不起訴(刑事裁判をするかどうか)を決めることになります。
一方で、少年は、原則として警察か検察から『家庭裁判所』に送致され、少年審判を受けることになります」
本多弁護士はこのように述べる。少年の場合、家庭裁判所では、どんな手続きが行われるのだろうか。
「家庭裁判所は『少年審判』を開いて、少年鑑別所による鑑別結果や、家庭環境等の調査結果、付添人による意見などを踏まえて、少年の処遇をどうするかを決めます。
この少年審判は、刑事裁判と違い、原則非公開です」
少年審判では、どんな決定がされるのだろうか?
「少年審判では、最終的に、大きく分けて4種類の決定がなされます。
(1)不処分
(2)児童相談所などへの送致
(3)保護観察や少年院送致などの『保護処分』
(4)検察官への送致
このうち、(4)の検察官送致は、一般に『逆送』あるいは『検送』などと呼ばれ、殺人など、一定の重い罪の事件について、刑事処分が相当であると判断された場合に行われます。
なお、犯罪行為時に16歳以上で、故意に被害者を死亡させたことが疑われる事件の場合には、原則として、検察官送致の決定がなされます」
検察官送致のことを「逆送」と呼ぶのは、もともとは警察・検察で扱われていた事件が、いったん家庭裁判所で審理されたあとに、再び検察に送られるのが「逆戻り」しているように見えるためだ。
●「逆送」されたあとの手続は?
では、検察官に「逆送」された後は、どうなるのだろうか。
「検察官送致がされた場合、少年は原則として起訴されます。それ以降の手続は、基本的に成人と同様です。
ただし、有罪とされた場合の刑罰は、成人に比べて緩和される場合があります。たとえば、14歳以上18歳未満の少年は死刑にすることができず、死刑とされるようなケースでも、その代わりに無期刑になります。
また、14歳以上18歳未満の少年は、成人なら無期刑が選択されるような場合でも、裁判所が10年~20年の有期刑とすることが可能です。
また、裁判所が保護処分に付するのが相当と考えた場合、再び家庭裁判所に事件を移送することもあります」
なぜ、少年についてはこうした手続きが定められているのだろうか。
「少年は、成長途中の未成熟な存在ですから、単に刑罰を科して終わりではなく、その少年に適した良好な環境で、きめ細やかな処遇を受けることによって、更生し、健全な社会人としての再出発することを期待したいということです。少年法は、このような『保護主義』を理念としているのです」
本多弁護士はこのように述べていた。