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防衛省「背広組」と「制服組」の立場が対等に――「文民統制」に影響はないのか?
自衛隊の意義をめぐって議論が続いている

防衛省「背広組」と「制服組」の立場が対等に――「文民統制」に影響はないのか?

安倍内閣は3月6日、防衛官僚(背広組)と自衛官(制服組)が「対等の立場」で防衛大臣を補佐できるようにする防衛省設置法の改正案を閣議決定した。「背広組が制服組をコントロールする仕組み」を改める。

これまでは、防衛大臣が自衛隊のトップに指示する際に「背広組」が補佐していたが、これを、「背広組」と「制服組」が対等な立場で防衛大臣を補佐する形に変更する。また、自衛隊の業務運用を担当する内局の運用企画局(背広組)を廃止して、業務を統合幕僚本部(制服組)に一元化する。

野党からは「文民統制の点から問題ではないか」といった疑問の声が出ているが、中谷防衛大臣は、「(文民統制が)より強化される」と説明している。

この「文民統制」とは、そもそも何なのだろうか。いま行われようとしている法改正によって、悪影響が出たりしないのだろうか。憲法問題にくわしい村上英樹弁護士に聞いた。

●軍隊の独走を防ぐのが「文民統制」の目的

「文民統制(シビリアン・コントロール)とは、『議会に責任を負っている大臣(文民)が軍事権をコントロールして、軍の独走を抑止する原則』です。

日本の自衛隊も、国民の代表である国会や内閣によって、コントロールされています」

文民とは、どういう立場の人という意味なのだろうか?

「日本においては、『文民』は、職業軍人(自衛官)ではないという意味だと考えられています。なお、文民でなければ、総理や大臣にはなれません」

たしかに、憲法66条2項では「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と定められている。なぜ、そうした仕組みがあるのだろうか?

「簡単に言えば、自衛隊が独り歩きして、戦争をすることを防ぐためです。

自衛隊は本来、国民のものです。もし逆に、自衛隊が力で国を支配するようになれば、国民が自衛隊の言うことをきかなければならなくなります。そうすると、民主主義どころではなくなってしまうのです」

そんなことがあり得るのだろうか?

「戦前には、軍が独走して軍事行動を起こすことがありました。また、『五・一五事件』『二・二六事件』など軍人が政治家を殺害し、軍が政治を支配した事実があります。

だからこそ、国民が選挙で選んだ国会や内閣が、自衛隊をコントロールする仕組みを守る必要があるわけです」

●制度変更の悪影響はあるか?

いま行われようとしている変更は、文民統制に悪影響を与えないのだろうか?

「いま、廃止されようとしている仕組みは、防衛省の背広組(文官)が制服組(武官)を監督するという、いわば『文官統制』と呼ぶべきものですが、その根底にあるのはシビリアン・コントロールの発想です。

文官統制を廃止することで、中谷大臣の言うように、より一層シビリアン・コントロールが強化されるのか。それとも逆に、自衛隊をコントロールしにくくなってしまう恐れのほうが大きいのか。その点を、しっかり見極めることが大切だと思います」

村上弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

村上 英樹
村上 英樹(むらかみ ひでき)弁護士 弁護士法人神戸シティ法律事務所
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、企業顧問業務、不動産問題、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。

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