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星野源さん「ネットの噂は事実無根」、暴露系インフルエンサーの「W不倫情報」投稿、名指ししなくても名誉毀損になる?
星野源さん(写真:アフロ)

星野源さん「ネットの噂は事実無根」、暴露系インフルエンサーの「W不倫情報」投稿、名指ししなくても名誉毀損になる?

シンガーソングライターで俳優の星野源さんが所属する芸能事務所「アミューズ」の法務部は5月23日、インフルエンサーの「滝沢ガレソ」氏のX投稿について「虚偽の情報の拡散、発信には法的措置を検討いたします」との考えを緊急表明した。

滝沢氏の投稿は、星野さんを想起させるような内容と言えるものだったが、星野さんを直接名指しはしていなかった。このような投稿は、名誉毀損などの法的問題はあるのだろうか。弁護士が解説する。

⚫︎真夜中の緊急投稿「事実は一切ありません」

問題になっている滝沢氏の投稿(5月22日)は、男性歌手がNHKのアナウンサーとダブル不倫し、それを取り上げようとした週刊誌に対して、男性歌手の所属事務所が「10億円を支払って」記事を揉み消したなどというものだ。

この投稿を受けて、X上では、星野さんと女性アナウンサーの名前がすぐに出るかたちで話題になっていた。

アミューズ法務部は5月23日午前3時28分、滝沢氏の投稿を受けて、次のようにポストした。

「滝沢ガレソ氏による『超有名女優とドラマ共演して電撃結婚した男性歌手がNHKアナウンサーと不倫をしており、その男性歌手の所属事務所が10億円を払って記事をもみ消した』との趣旨のXでの投稿は当社所属の星野源のことを言っているのではないか、との指摘がインターネット上で出ており、また当社にも多くのお問合わせが寄せられています。

しかし、星野源に関してそのような事実は一切ありません。また、当社が記事をもみ消したという事実も一切ありません」

星野源さんも同日、自身の公式インスタグラムのストーリーズで、法務部の投稿を取り上げながら「いまSNSやインターネット上などで噂されている件に事実は一切ありません。事実無根です」と反論した。

アミューズが深夜3時台に対応をしたことは異例ともいえ、緊急で対応する必要のある問題と捉えたとみることができる。

アミューズ法務部はまた「当社所属アーティストを名指しし、あるいは名指ししなくても、当社所属アーティストであることが分かるような情報を示して虚偽の事実を摘示、投稿することは名誉毀損その他の違法行為に当たります」としている。

名前を出さなくても、特定の人物であることがわかるかたちで「不倫の事実」などを指摘するような投稿をすると、法的責任を問われることがあるのだろうか。インターネットの問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

⚫︎【弁護士の見解】星野さんへの名誉毀損が成立する余地はある

——滝沢ガレソ氏の投稿は、星野さんに対する名誉毀損などの違法行為にあたると考えられますか

名誉毀損などがあると評価できる前提として、誰のことを指しているかがわかる必要があります。だからと言って、名指しがあることが必須というわけではありません。

この点は、一般的に「同定可能性」の問題とされていて、「石に泳ぐ魚事件」の東京地裁判決(平成11年6月22日)および同事件の最高裁判決(平成14年9月24日)が参考になります。

判決では、その人の属性のいくつかを知る人から誰のことであるかを認識できるのであれば「同定可能性」があるとされています。

今回の件でも、「超有名女優とドラマ共演して電撃結婚した男性歌手」とかなりの情報量があり、その属性から誰のことを指すと認識することは容易です。それゆえこれだけ話題になったわけです。

そして、内容的にも不倫をしているというものであり、名誉毀損にあたる余地は十分あるといえるでしょう。

——「所属事務所が10億円を払って記事をもみ消した」という投稿内容から、アミューズへの名誉毀損なども成立するでしょうか

名誉毀損といえるには、社会的評価の低下があるといえる必要があります。

記事を「もみ消す」という言葉のイメージはあまり良くないとはいえるでしょうが、これが違法・不当な行為であるということは難しいのではないかと思います。

そのため、社会的評価の低下があるとまで評価されるかは疑義があり、名誉毀損等が成立するということは少々難しい印象です。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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