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ラーメン店主が苦言「丼ぶりに鼻かんだティッシュ捨てないで」、"不快"だけじゃなかった理由とは?
「いっけんめ」のラーメン(弁護士ドットコム)

ラーメン店主が苦言「丼ぶりに鼻かんだティッシュ捨てないで」、"不快"だけじゃなかった理由とは?

ラーメン店の店主が、食べ終わってスープの入った丼ぶりにティッシュなどのゴミを入れる客に「やめてくれ」と苦言を投じた。

話を聞いてみると、「不快」というだけでなく、ゴミ処理の問題もあるという。一方で「ゴミは食器に入れてほしい」と“真逆”の考えをもつ飲食店もあるようだ。

どのような事情があるのだろうか。

●ゴミ箱もあるのに「丼ぶりにティッシュぶち込まないで」

茨城県のラーメン店「中華そば『いっけんめ』」は10月、Xに次の投稿をポストした。

〈スープが残っている丼ぶりの中にティッシュをブチ込むのはやめて下さい。当店、各所にゴミ箱あります〉

これには「丼ぶりはゴミ箱じゃない」など多くの同意が寄せられた。

一方で「ゴミを食器に入れる」という飲食店や「よかれと思ってゴミを食器に入れていた」という客もみられる。ゴミをひとまとめにすることで、店側が卓上を片付ける手間を減らそうとする考えにもとづくものかもしれない。

取材に応じた「いっけんめ」の店主によると、これまで何度も同様のケースに悩んできたという。客が店を去る前に気づいたときには、店が「やめてください」と声をかけたこともあった。

食器にゴミを入れてほしくない理由は、主に「汚くて不快」「ゴミ処理の手間・ゴミの収集を断られるおそれがある」。

「自分が鼻をかんだり、口を拭ったティッシュを丼ぶりの中に入れるのは汚くて、店も他のお客さんも気分が悪いです。まだ食べているお客さんは本当にかわいそう。丼ぶりを洗ったとしても不快ですよ」

「水分を含んだティッシュを取り分けて捨てるのも手間がかかります。ゴミ収集の業者からは、水分を含んだものは燃えるゴミとして出さないでと指示されていて、汁が多い場合は回収しないと言われています」

では、どうすればよいか。

「近くに用意したゴミ箱に自分で捨てる。皿の近くに丸めておく。これだけでいいんです。うちはスタッフにも丼ぶりや食器にゴミを入れるようには指示していません」

●自分の家で友達にやられたらイヤじゃないか?

店主は、マナーやモラルの問題だと指摘する。突き詰めると「それって自分の家や高級な飲食店でもやるの?」という疑問にたどりつく。

「小綺麗なレストランでそんなことをやっている人はいない。外食でわざわざやるのは、ラーメン屋が軽くみられているということではないか」

「じゃあ私があなたのお家にお邪魔して、ごはんを食べさせてもらって、思いっきり鼻をかんで、スープにぶちこんで黙って片付けさせますが、それでもいいんですか?」

それくらい説明しないと、失礼なことだと気づいてくれない悲しさを感じている。

なお、このような投稿のたびに、「書いてないことを守る必要があるのか?」「客の見えるところに注意書きを用意すればよい」という反応がなされるのが常だという。

「でも、マナーの悪い人は自分の目の前に注意書きがあったとしても、不思議と見えないんですよ」

●弁護士「器物損壊罪にあたりうる」

一方で、西口竜司弁護士は法的な問題も指摘する。

「丼ぶりを破損させているわけでなくても、鼻をかんだティッシュなどのゴミを丼ぶりに入れるのは、刑法261条の『器物損壊罪』にあたりうる行為です。この罪が認められた有名な判例に『とっくりに放尿した例』があります。

損壊とは、目的物の効用を害する行為を意味し、壊さなくても使いにくくするような場合も含まれます。3年以下の懲役(改正後は拘禁刑)または30万円以下の罰金もしくは科料になります」

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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