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「本人取材していない」産経新聞の敗訴確定、元宮古島市議・石嶺香織さんへの名誉毀損「悪意もった捏造記事だった」
石嶺香織さん(2020年11月の提訴会見)/産経新聞社の入るビル(Ryuji / PIXTA)

「本人取材していない」産経新聞の敗訴確定、元宮古島市議・石嶺香織さんへの名誉毀損「悪意もった捏造記事だった」

県営住宅への入居をめぐる産経新聞のネット記事で名誉を傷つけられたとして、沖縄県宮古島市の元市議・石嶺香織さんが起こした裁判で、名誉毀損を認めた判決が9月21日までに確定した。原告・被告ともに上告していなかった。

1審・東京地裁は今年2月、記事による名誉毀損を認定。控訴審・東京高裁も8月、記事による社会的評価の低下を認めたうえで、賠償額を11万円から22万円に増額する判決を下していた。いずれも記事の削除を命じている。

判決の確定を受けて、産経新聞は9月19日、ニュースサイト「産経ニュース」から問題の記事を削除した。掲載から削除まで、6年以上かかった。

石嶺さんは弁護士ドットコムニュースの取材に「産経新聞は再発防止策や記事を書いた記者の処分まで公表すべきです。またデマで困る人が出ないとは限らない」と語った。

●東京高裁「記事の内容は虚偽と評価されてもやむをえない」

問題とされたのは、産経新聞が2017年3月22日にネットで公開した「自衛隊差別発言の石嶺香織・宮古島市議、当選後に月収制限超える県営団地に入居」という記事。

石嶺さんは2020年9月、実際には問題がないにもかかわらず、意図して県営住宅に不正に入居したことを指摘するもので、名誉を傷つけられたとし、計220万円の損害賠償と、ネット記事の削除を求めて東京地裁に提訴した。

東京地裁は、産経新聞が石嶺さん本人に取材をしていなかったことなどから、「基本的な取材事項の取材を欠いた不十分なものであったというほかない」と指摘した。

東京高裁は「記事の内容は虚偽と評価されてもやむをえないもの」「記事の掲載に合理的な根拠がなかった」として、さらに選挙のあった2017年10月ころに、記事の閲覧数が一時的に増加したことなども踏まえて、賠償額を増額させた。

●石嶺元市議「都合悪いニュースだけど自社アカウントでも伝えよう」

産経新聞社広報部は、弁護士ドットコムニュースの取材に「判決を真摯に受け止め、公正な報道に努めてまいります」とコメントした

勝訴が確定した石嶺さんは「選挙期間中に記事が読まれたことの影響が認められて賠償金が増額された点はよかったと思います。しかし、それでも20万はあまりに安い。ろくに取材もせずにデマを書いて20万円払って済むなら、また同じような記事が出ないとも限らない。こっちはたった1個の記事を消すために6年半もかかりました。理不尽です」と話す。

「判決では不十分な取材だったと明言されてよかったです。もっと言えば、取材不足ではなく、明らかに悪意をもった捏造記事です。記事を書いた記者は本人尋問で裁判官から尋ねられて『(石嶺さんの)電話番号がわからなかった』と答えましたが、議員の電話番号なんて議会事務局に聞けば教えてもらえるもの。悪意をあおる創作記事をつくるため、あえて取材をしなかったのではないでしょうか」(石嶺さん)

産経新聞は9月19日、問題となった記事を削除したうえで、削除を伝える記事を出した。

石嶺さんは「『判決を真摯に受け止め、公正な報道に努める』のはよいと思うけど、再発防止策や記事に関わった人の処分まで報告してほしい。なにより、本当に反省しているなら、この削除記事も『産経ニュース』のSNSアカウントで投稿するべきです」

産経ニュースの「X」(ツイッター)アカウントは、フォロワー数72万人を超える(9月21日現在)。問題の記事が出たときもアカウントが拡散に果たした役割は大きいと石嶺さんは考えている。

ところが、今回の産経ニュースの「削除記事」は、9月19日以降もXに投稿されていないようだ(9月21日現在)。

石嶺さんは「自分たちに都合の悪いニュースだとしても、本当に反省しているなら、自分たちから率先してSNSでも広めるんじゃないでしょうか」と話した。(ニュース編集部・塚田賢慎)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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