元「バイトAKB」のラーメン店主・梅澤愛優香さんがフードジャーナリスト・はんつ遠藤さんからセクハラを受けたうえ、SNS投稿によって名誉を傷つけられたとして訴えていた裁判の判決が8月25日、横浜地裁であった。
中山雅之裁判長は、梅澤さんの「首から下」を承諾なく撮影したことをセクハラと認めたほか、反社会勢力との関係をうかがわせるフェイスブックの投稿が名誉毀損、業務妨害、侮辱にあたると判断。はんつさんに38万5000円の支払いを命じた。(編集部・塚田賢慎)
●セクハラと認定された行為は
梅澤さんは2019年3月、食事の席で、酒に酔ったはんつさんから、既婚女性との不倫関係を想像させるいかがわしい「人妻シリーズ」という記事に写真を使いたいともとめられたという。「写真はちょっと」と断ったものの、首から下の身体を無断で撮影されたと主張。セクハラにあたるとうったえた。
一方、はんつさんは、首から下の撮影は明確に断られておらず、撮影直後に写真を消すことを頼まれなかったことから梅澤さんによる「黙示の承諾があった」と主張した。また、「人妻シリーズ」に使いたいから撮影したいと発言した事実はなく、梅澤さんの経営する店の宣伝のために撮影したとも説明した。
しかし、判決ははんつさんによるそのような主張を否定した。
梅澤さんはフードジャーナリストとして影響力のあるはんつさんに、その場で明確な拒絶や削除をもとめられなかったと反論している。
判決は梅澤さんの反論を「十分考えられること」として、「黙示の承諾」があったとは認められず、承諾なく「人妻シリーズ」に使いたいと述べて、首から下を撮影したことが違法なセクハラにあたると判じた。
梅澤さんは肖像権の侵害も主張していたが、横浜地裁は、首から下を撮影したのは、梅澤さんだと特定できないため、肖像権侵害にあたらないとしている。
また、はんつさんが初対面の梅澤さんを「まゆかちゃん」と「ちゃん」付けで名前を呼んだことはセクハラにあたらないと判断した。
●フェイスブックの投稿「ヤバい」「ヤバい会社」「ヤバい人」
セクハラのほかに、梅澤さんは、はんつさんのFacebook投稿も問題としていた。
はんつさんは2020年4月、梅澤さんの店の工事費支払いをめぐって、
「バイトAKB!!これはヤバい」
「地元の葛飾で超モメてたラーメン店」
「ここ、ヤバい会社だけど地元の某業者にお金払わなくて、さらにヤバい人が加わったりしてスゴイことになっちゃって、ボクは両者知り合いだったりして、さすがに仕事では絡めないラーメン店」
などとFacebookに投稿した。
判決は、これらの投稿は、梅澤さんが問題のある経営者であり、その問題に反社会的勢力が関与したことがあるという事実を摘示することで、梅澤さんが反社とのつながりをもっているとの印象をあたえ、社会的評価を低下させると判断。さらに、これらの投稿が業務妨害であり、侮辱(名誉感情の侵害)でもあると認めた。
また、これらの投稿の8カ月以上前に、業者との間で支払いトラブルは解決済みで、梅澤さんの経営する店の食材産地偽装や従業員への給料未払いの問題が報道されているからといって、これらの投稿がそうした報道を前提としているとは読み取れず、違法性は阻却されないとしている。
精神的苦痛による慰謝料は、撮影(5万円)とFB投稿(30万円)の計35万円が相当とされた。
●はんつさんの訴えは退けられた
一方、はんつさんも、梅澤さんが2021年にテレビの情報番組で、あるラーメン評論家からセクハラや中傷・嫌がらせをされたと話した内容や、その日のうちにTwitterに投稿した「ラーメン評論家のHさん」からの中傷などを受けたとする内容が名誉毀損にあたり、仕事の打ち切りにもあったなどとして、計約800万円や謝罪広告をもとめて反訴していた。
判決では、梅澤さんの発言や投稿は、次の内容を摘示するものだったが、いずれも重要な部分において真実と認められるとして、はんつさんの請求には理由がないとして棄却された。
・はんつさんからセクハラや中傷を受けたこと
・はんつさんから梅澤さんの経営する店が業者に工事費用を支払わないなどあることないこと言われたこと
・はんつさんのFB投稿は事実無根
この日の判決を受けて、弁護士ドットコムニュースは、原告・被告双方にコメントをもとめている。回答があれば追記する。
【2人が法廷で語ったことは】バイトAKBラーメン店長「セクハラ裁判」、フードジャーナリストはんつ遠藤さんの反訴理由が明らかに