旅行や出張など大荷物の時に便利なキャリーケースだが、一歩間違えば、怪我やトラブルに発展してしまう。弁護士ドットコムにも使用時のトラブルをめぐり、相談が複数寄せられている。
中でも多いのが、エスカレーターの上からキャリーケースが「降ってくる(落下してくる)」という恐ろしいものだ。いくつか抜粋してみよう。
「ある駅にてエスカレーターに乗っていたところ、上からキャリーケースが落ちてきて自分の腰と機材に当たった」
「駅のエスカレーター下りに乗っていた際、キャリーケースが落ちてきたことがありました。私は中間地点にいたのですが足元にぶつかり5、6段滑り落ちました。打撲と診断され、1カ月歩くのが大変でした」
「駅の下りエスカレーターで誤ってキャリーケースを滑らせてしまい、前方の方のふくらはぎにぶつけてしまいました」
中には「私もスマホを見ていて気づくのが遅くなったため、相手になにも責任を求めなかった」という人もいた。このようなエスカレーターでの落下事故で、どのような法的責任を問う(問われる)ことになるのか。注意点について、伊藤諭弁護士に聞いた。
●刑事上と民事上の責任が考えられる
――エスカレーターの上からキャリーケースを落下してしまい、ケガをさせた(させられた)場合、法的な責任はどう考えられますか
うっかりキャリーケースを落下させ、結果として他人にケガをさせてしまった場合、過失傷害罪ないし重過失傷害罪が成立します。
仮に、面白がってわざとエスカレーターの上からキャリーケースを落としたような場合であれば、ケガをさせると傷害罪になります。
民事上の責任も当然に発生します。
被害者に対してその損害(治療費や休業損害、慰謝料、後遺障害が発生した場合の逸失利益や後遺症慰謝料など)を賠償することになりますが、ケガをした方にも一定の落ち度がある場には、過失相殺による減額がされる可能性はありえます。
もっとも、過失割合については、被害者の方が通常の方法でエスカレーターに乗っていたというだけであれば過失相殺を認めることは少ないと思われます。
そもそも、キャリーケースをエスカレーターに乗せること自体、ある程度の危険を伴う行為です。それによって事故が発生した場合、転倒や巻き込まれなど、通常の路上における事故よりも深刻な事態を招くことも考えられます。その場合、賠償責任も高額になりかねません。
何より、キャリーケースを持っている自分自身がケガをする可能性もありますので、持ち運びは慎重にしてください。