日本弁護士連合会(日弁連)は10月26日、名古屋市に対し、障害者であっても支障なく利用できるよう、再建する名古屋城の天守閣に最上階までのエレベーターを設置するよう要望したことを明らかにした。要望書の提出は24日付。
2019年1月、名古屋城天守閣のエレベーター設置について活動する任意団体が申立人となり、エレベーターを設置しないとする方針を撤回するよう名古屋市に対する警告を求め、人権救済申立てをしていた。
日弁連副会長の増子孝徳弁護士は、10月26日に開かれた定例会見で、「史実に忠実な復元であっても、あくまで現代の法令に基づくバリアフリーの要請を満たす必要がある」と話した。
●「エレベーター以外の昇降手段は考えられない」
現在の名古屋城天守閣は、1959年に再建され、外付けエレベーター1基と内部エレベーター2基が設置されている。
名古屋市は、現在の天守閣の設備老朽化や耐震性確保などを理由に、天守閣の解体・再建を目指しているが、「史実に忠実」に復元するとして、2018年5月に、エレベーターを設置せず、新技術の開発などを通じてバリアフリーに最善の努力をするとの方針を公表していた。
市のいうバリアフリーを実現する新技術については、2022年4月18日から8月12日の間で公募を実施し、最優秀者選定は同年12月とされている。
今回の人権救済の申し立てに関する調査報告書によると、現時点では、公募にどのような申請があったかは不明で、市は、エレベーターに替わる具体的なバリアフリー技術の提案内容や公募への参加者数など、公募に関するすべての情報を非公開にしているという。
調査報告書は、名古屋城天守閣は不特定多数の来訪者を予定する公共施設であり、障害者や高齢者など階段の昇降が困難な人でも障壁なく利用できる施設であることが必要だと指摘。
天守閣にあえてエレベーターを設置せずに再建しようとすることは、天守閣を観覧したり、天守閣か城下の眺望を享受したりすることで差別されない権利・利益を侵害し、現にエレベーターの利用を保障されていた障害者を合理的な理由なく差別することになり、憲法や障害者権利条約などに違反することになるとしている。
高田智美弁護士(日弁連・人権救済調査室嘱託)は、「障害のある方が、迅速に、安全に、大量に、人の手をかけず心理的負担を与えずに昇降する手段としては、バリアフリー新法に従ったエレベーター以外には考えられない」とし、再建する名古屋城の天守閣には、バリアフリー新法の基準を満たすエレベーターを設置すべきと訴えた。