夜中に「ピギャー!」 無法地帯化する「ペット禁止」マンション、ルール守る一家の憂うつ
「ペット禁止」マンションのベランダで、いるはずのない猫を見た人も(tt / PIXTA)

夜中に「ピギャー!」 無法地帯化する「ペット禁止」マンション、ルール守る一家の憂うつ

「ペット禁止」の賃貸マンションに引っ越してきたアオイさん一家。引っ越しのあいさつで隣の部屋に行くと、隣人はボソボソと「うちには『小さな子』がいるので、迷惑をかけるかもしれない」と話した。子どもがいるアオイさんは当初、「お互いさま」だと思った。

異変に気づいたのは、数カ月後のこと。隣人宅から「ピギャー!!」という声が聞こえるようになった。突如、深夜に「ギャー!!」と叫ぶ声があり、飛び起きたこともある。「絶叫」のようだったため、アオイさんは「虐待ではないか」と心配になった。

ある日の夜、ベランダから「ギャアア!」という声が聞こえ、アオイさんはおそるおそる隣のベランダを覗き込んだ。視界に入ったのは、猫を抱き上げる隣人の姿であった。隣人の言う「小さな子」は「人」ではなく「猫」だったのだ。

●「無法地帯」化し、ルールを守らない住民たち

隣人だけではない。そのマンションは、住民の多くが犬や猫などのペットを飼う「無法地帯」となっていた。早朝の散歩に出かけたアオイさんは、犬を連れた人がそそくさとマンションから出ていくのを見かけた。

小学校に通うアオイさんの子どもも「1階に住んでいるAくんはハムスターと猫、8階のBくんは犬を飼っているんだよ!なんでうちだけ飼えないの?」と言うようになった。アオイさんは動物アレルギーだが、子どもは「だったら、毛が抜けにくい動物を飼えばいい!」と納得していない。

「私たちが引っ越す前に住んでいた人も犬を飼っていたようです。転送届を出していないのか、たまに郵便物が届くんですよ。ほとんどは『れもんちゃん』宛のもので、差出人は動物病院や動物の保険関係のものでした」(アオイさん)

これだけの人がペットを飼っているならば、自分が「ペット禁止」と思い込んでいるだけなのかもしれない。そう考えたアオイさんは、改めて契約時に渡された規約を見直した。

だが、そこには「小鳥や魚類」は飼育可能と書かれていた一方で、「犬、猫、ハト、ニワトリなどの動物」の飼育は明確に「禁止」とされていた。

「ルールを守らない人がこれだけいると、何のための規約なのかと疑問が湧いてきます。規約を変更するか、飼っている人はペット共生型の住宅に移ってほしいと思っています。なんだかルールを守っているほうが損をしているような気がします」(アオイさん)

●規約違反の住人に、犬の飼育を禁止した裁判例も

アオイさんが考えているように、ペットを飼っている人に、ペット共生型の住宅にうつってもらうことはできるのだろうか。

ペットに関する法律問題に関心の高い渋谷寛弁護士は、次のように説明する。

「マンションに関する管理規約で『犬猫が飼育できない』とあれば、飼育はできません。

そこで、マンションの管理会社または管理組合を通じて、このマンションで飼育しないように改善を求めることになります。つまり、このマンション以外の家へ里子に出して譲渡すること、犬猫と一緒にこのマンション以外の家に移住することを促すことになります。

それでも応じてもらえない場合には、このマンション内での犬猫の飼育禁止を裁判所に求めることもできます。実際に、マンションの規約に違反して犬を飼育していたとして、その犬の飼育を禁止した裁判例もあります。

しかし、ペット共生型の住宅にうつるように強制する法的根拠はないでしょう。ペットの飼育禁止の裁判例はありますが、ペット共生型住宅へ引っ越せと命じた裁判例は思い当たりません」

では、マンションの規約を「ペット飼育可」に変更してもらえる可能性はあるのだろうか。

「賃貸マンションの場合は管理会社、あるいは管理組合があれば、組合に対して、規約の変更を要請することが必要でしょう。管理組合は、マンションの管理規約変更の集会決議において、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成多数を得られれば、規約変更が成り立ちます」

プロフィール

渋谷 寛
渋谷 寛(しぶや ひろし)弁護士 渋谷総合法律事務所
1997年に渋谷総合法律事務所開設。ペットに関する訴訟事件について多く取り扱う。ペット法学会事務局長も務める。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする