最高裁判決の判決書の点が、「,(カンマ)」ではなく「、(テン)」になっている——。新年度に入り、こんなツイートが法曹界を賑わせた。
最高裁判所に取材したところ、2022年4月11日から裁判官の申し合わせにより、判決を作成する際、原則として読点は「、」を用いることとしたという。
これにともない、裁判所ウェブサイトに掲載される最高裁判例の本文も同じように表記しており、実際に「,」ではなく「、」を用いた最高裁判例が掲載されたのは、4月12日付の判決からだという。
●公用文作成の基準、70年ぶりに変わる
変更の理由について、最高裁は「内閣官房長官から参考送付された公用文作成の考え方(文化審議会の建議)を参考に、公用文である裁判書について、読点に『、』を用いることとした」とコメントした。
「公用文作成の考え方」は2022年1月7日、政府における公用文作成の手引きとして、文化庁の文化審議会が文部科学相に建議した。1951年に通知が出された「公用文作成の要領」に代わるもので、横書きの読点は、「、」を用いることを原則とすることが記載されている。
●2016年の弁護士アンケート「、」が最多
ちなみに、弁護士ドットコムニュースでは2016年、弁護士ドットコムに登録する弁護士たちに「、」と「,」をどう使い分けているのか意見を聞いたことがある。
投票した39人のうち、「法律文書も含め、作成する文章は全て『、』を使用する」が17人と最も多く、次いで「訴状など法律文書に限らず、作成する文章は全て『,』を使用する」が14人だった。
「、」派の意見としては、「テン」の方が読みやすく馴染み深いというものがみられた。
『私は、日本語であるということと、依頼者の方にとって読みやすいという理由で「、」を使っています。しかし、文書は内容なので、形式にこだわらなくていいじゃないか、どちらでもよいじゃないかというのが私の本音です』(武山茂樹弁護士)
『日本語として「、」の方が違和感がないという理由と、一般の方に馴染みのある用法の方がよいと思うので使用しています。 裁判所では「,」が通常であることも知っていますが、「、」も許されるということも知っているので、特に問題ないと考えています』(川島英雄弁護士)
「,」派は、「裁判所の判決の表記に合わせている」という理由が目立った。
『元々は裁判所の判決などの表記にあわせて「,」を使用していましたが,そのうちに,「,」でないと落ち着かなくなって,裁判所用文書以外でも「,」を使っています』(秋山直人弁護士)
『裁判所に提出する文書で「,」を使うことから、普段から「,」に統一することで癖を体に染み込ませています。なぜ日本語の文書で「,」を使うのかは正直良くわかりませんが、「形式とはそういうもので理由などないのだ」と受け止めて深く考えておりません』(石井康晶弁護士)
今後、裁判所の判決の表記が変わることで、弁護士の間でも「、」派が圧倒的になるかもしれない。