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東京都が規制に乗り出した弁当の「路上販売」 弁護士はどう見ているのか?
独身で一人暮らしのサラリーマンにとって、安くてボリュームのある弁当はありがたい存在だ

東京都が規制に乗り出した弁当の「路上販売」 弁護士はどう見ているのか?

ビルが建ち並ぶ都心のオフィス街。ランチタイムには、弁当の路上販売業者が次々と姿を現す。一食500円くらいの価格設定が主流で、店に入るよりも割安だとして、サラリーマンやOLたちに人気だ。

しかし、こうした弁当の路上販売には衛生面の懸念もあり、東京都は新しいルールを作る動きを本格化させている。そのたたき台となるのが、2月に出された東京都食品安全審議会の答申だ。

答申は、実態調査を踏まえて、路上販売の弁当には、温度管理の不備や責任者の所在が不明確なケースがあると指摘。路上販売の業者に対して、保冷容器・保冷剤の使用や、食品衛生責任者を置くことなどを義務づける案を示している。

東京都は答申を受けて、区や市と協議したうえで、条例改正を目指すというが・・・。今回の答申内容をどのように評価すべきか。吉成安友弁護士に意見を聞いた。

●販売規模が「行商」というには大きすぎる

「東京都内での弁当販売は、都の食品製造業等取締条例で、原則として許可制となっています。許可を受けるにあたっては、条例の施設基準を満たす必要があります。

ところが、『人力による移行販売』である『行商』については、例外的に、届出をすればよいとされています。

この『人力による移行販売』は、『人が一人で運搬できる量を取り扱うこと』と定義されています。つまり、小規模にすぎないので、規制もゆるやかでよいと考えられていたようです」

何か事情が変わったのだろうか?

「実態調査によると、57%の業者が弁当の運搬に自動車を使っていて、『行商』として本来想定されているよりも、大規模な営業をおこなっているようです。この実態は、行商を届出制にとどめている条例の趣旨にあっていません。

調査では、行商人の衛生管理が不十分という結果も出ており、こうした結果が正しいのであれば、食品衛生責任者を置かせるなど、通常の弁当販売に準じた規制をすることもやむをえないかもしれません」

●弁当の「製造段階」にも問題がある

「個人的に気になったのは、製造時と販売時における、細菌検査の比較結果です。

実態調査は、95個の行商用弁当について、細菌数や大腸菌の有無などを調べ、製造時32個(33.7%)、販売時35個(36.8%)を不適合と評価しています。

つまり、行商人に渡して屋外に出す前の製造段階で、すでに不適合であるものが多かったわけです」

このように吉成弁護士は説明する。

「こうした結果を踏まえ、答申では製造施設での衛生管理も問題とされています

行商用弁当を製造している施設を調査したところ、一般飲食店が53%で最も多かったということです。責任の所在が不明確になりやすい態様の営業であるといえ、それが、製造施設での衛生管理の不徹底につながっている可能性もあると思います」

屋外販売の影響はないのだろうか?

「屋外販売の悪影響も確認されています。

細菌数と大腸菌群の数を調べて比較した試験では、製造時には7個だった不適合数が、販売時には19個と倍以上になっていました。

つまり、菌の増殖という意味では、屋外での販売による影響がうかがえます」

それでは、答申全体を総合的にみると、どうだろうか。

吉成弁護士は「答申は、製造から販売までの全体的な衛生管理の実施や、責任の所在の明確化のための仕組み作りが必要であるという見解です。実態調査の手法や評価が正しいという前提ですが、この見解には基本的に賛成できます」と結論づけていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

吉成 安友
吉成 安友(よしなり やすとも)弁護士 MYパートナーズ法律事務所
東京弁護士会会員。企業法務全般から、医療過誤、知財、離婚、相続、刑事弁護、消費者問題、交通事故、行政訴訟、労働問題等幅広く取り扱う。特に交渉、訴訟案件を得意とする。

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