東京ディズニーランド(千葉県浦安市)で着ぐるみをかぶってショーなどに出演していた契約社員の40代女性が、上司からのパワハラで心身に苦痛を受けたとして、運営会社オリエンタルランドに対し330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3月29日、千葉地裁であり、内野俊夫裁判長は、会社側に88万円の支払いを命じた。
判決後、記者会見を開いた女性は「私はいじめやパワハラをやめてほしいと声を上げることは夢を壊すことだと思っていません。夢を壊すための裁判ではなく、夢を守るための裁判だと思っています。なぜ裁判を起こさなければならなかったのか、今一度考え直してほしいです」と涙ながらに訴えた。
●女性「従業員にとっても『夢と魔法の国』になって」
訴状などによると、女性はキャラクターコスチュームを着てショーに出演していた。2013年1月から18年3月ごろまでの間、上司から複数回のパワハラを受けたと主張していた。
代理人によると、判決は、女性が人間関係から切り離され、仕事に対して配慮を求めている場合には、会社側は他の出演者に事情を説明するなどして、職場の人間関係を調整して孤立することがないよう配慮する義務があると指摘。会社側の安全配慮義務違反を認め、慰謝料80万円(弁護士費用8万円)の支払いを命じた。
3年8カ月にわたる裁判を終え、女性は「ディズニーが悪いのではなく、悪いのは労働環境を是正していないオリエンタルランドという会社です」と改めて訴えた。
「今も昔もディズニーが好きで、裁判が終わった今も、ディズニーというコンテンツを愛しています。今後自分と同じように憧れて入社してくる方々が、自分を同じ目に合わず安心して働くことのできる、本当に従業員にとっても『夢と魔法の王国』と自信を持って言えるような環境になってほしいです」
代理人の広瀬理夫弁護士は「判決は、いち個人の不法行為を認めるのではなく、原告本人が病気になり困っていた事実は上司も知っていたのにそれを放置した会社の責任を認めた。上司を含めた組織全体が、職場環境を悪化させている、隠蔽しようとしていると認めている」と評価した。
●オリエンタルランド「誠に遺憾」
オリエンタルランド広報部は取材に次のようにコメントした。
「今回の判決において、当社の主張が一部認められなかったことは誠に遺憾であり、判決内容を精査した上で今後の対応を検討してまいります。なお、原告が主張するパワーハラスメントに該当する発言は認められませんでした。ゲストの皆様をはじめとする日頃より当社を支えて下さるすべての皆様に対し、ご心配をおかけしておりますことをお詫び申し上げます」