長崎市幹部(故人)から性暴力を受けたとして、女性記者が市に損害賠償などを求めた訴訟をめぐり、新聞労連(日本新聞労働組合連合)が9月27日、10月に予定されている証人尋問について誠実に対応するよう求める要請文を田上富久長崎市長宛てに提出した。
女性記者は2007年7月、当時の長崎市原爆被爆対策部長から取材中に性暴力を受けたとして、長崎市に対し約3500万円の損害賠償や謝罪を求める訴訟を起こしている。10月4日と18日に長崎市長や当時の市の幹部、女性記者などへの証人尋問が予定されている。
要請文は「長崎市は虚偽の風説を放置し、部長らを擁護することで、市に対する社会的批判や責任追求を逃れようとしてきました。証人尋問においては、原告の訴えに真摯に向き合い誠実に対応することを強く求めます」としている。
●「多くの記者が取材先から性暴力被害を受けている」
新聞労連によると、女性記者は性暴力を受けたあと、PTSDと診断され休職。別の市の幹部が「男女の関係だった」などと虚偽の話を流し、市が対策を怠ったために名誉を傷つけられ、二次被害に苦しんだと主張している。部長は市の調査がおこなわれた直後の2007年秋に自殺した。
新聞労連は2019年3月、早期救済を求めて市側と交渉したが、市側は女性が損害賠償の請求権を放棄しなければ謝罪に応じないという姿勢を示したという。
28日に都内で会見を開いた新聞労連の吉永磨美・中央執行委員長は「多くの記者が取材先から性暴力被害を受けている。ネタをもらうために相手と対峙しつつ関係性を深めなければいけない中で、こうした問題が起きているが、取材であることが認められないとなると、あらゆる被害が認められなくなってくる可能性がある」と懸念を示した。
代理人の中野麻美弁護士は「行政側が情報を記者に与えるという優位な立場にありながら、その機会を利用して思うままに人権侵害を加えるという構造を明らかにする必要がある」と話した。