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匿名の相手に「イキリすぎ」「クレーマーババア」と投稿…私は訴えられますか?
画像はイメージです(jessie / PIXTA)

匿名の相手に「イキリすぎ」「クレーマーババア」と投稿…私は訴えられますか?

匿名で質問ができるインターネットサービス「質問箱」に誹謗中傷を投稿してしまったという人から、「名誉毀損罪や侮辱罪で訴えられるのでしょうか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の男性は、SNSで男性の好きなテレビ番組を批判する見ず知らずの人の投稿を見つけました。その内容に頭に来て、リプライをしたところ言い争いに発展。

その勢いで相手がやっていた質問箱に「イキリすぎ」「お前はもうテレビを見るな、クレーマーババア」といった内容を送ってしまいました。

「取り返しのつかないことをしてしまった」と反省している相談者ですが、相手は裁判を起こすと言っています。

このような内容は、名誉毀損罪や侮辱罪に当たる可能性はあるのでしょうか。また、発信者情報は開示されてしまうのでしょうか。大木怜於奈弁護士に聞きました。

●侮辱罪にあたる可能性がある

——相談者は思わず勢いで書き込んでしまったようですが、どのような法的問題がありますか。

まず、相談者が投稿した内容は、侮辱罪にあたる可能性があります。具体的に解説していきます。

名誉毀損罪(刑法第230条第1項)は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。

これは、社会的評価を低下させる具体的事実を不特定多数者(または伝播可能性ある特定少数者)に対して示すことで成立します。

また、侮辱罪(刑法第231条)は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と規定しています。

これは、具体的事実の摘示をすることなく、不特定多数者(または伝播可能性ある特定少数者)に対して、人の社会的地位を軽蔑する自己の判断を発表することで成立します。

例えば、事実を摘示せず、「Aは馬鹿ものだ」などといった場合も当てはまります。

このように両罪とも、「公然と」、すなわち、不特定多数者または伝播可能性ある特定少数者に対するものであることで成立します。

●リスクを考えて

——今回のケースでは「質問箱」というサービスでおこなわれましたが、「公然と」にあたるのでしょうか。

「質問箱」は、開設者が回答すると、自動的に連携しているツイッターアカウントにツイートされるようになっているようです。

ツイッターにシェアしない限り、その質問は開設者だけがみられる仕様とのことですが、開設者が質問箱の投稿を自動でシェアする機能をオンにしているような場合には、伝播可能性ある特定少数者に対する投稿であるとして、「公然」性が認められる可能性は高まるかと思います。

したがって、今回の投稿は、侮辱に該当する可能性があるため、発信者情報開示請求において要件とされる権利侵害にあたると判断される可能性があり、発信者情報が開示されるおそれがあります。

感情的になって投稿する前に、今一度こうしたリスクを考えておくほうが安全です。

プロフィール

大木 怜於奈
大木 怜於奈(おおき れおな)弁護士 弁護士法人レオユナイテッド銀座法律事務所
弁護士登録前の会社員としての勤務経験も活かし、ビジネス実態に即したリーガルサポートの提供を心掛け、企業法務においては、「管理法務」を取扱業務の柱として、多様な経営者のパートナーとして、人事労務、営業秘密管理、風評管理など、様々なサービスの拡充に努めております。 また、労働問題にも重点的に取り組み、「企業の人事労務クオリティ向上による従業員に対する真の福利厚生の実現」を目指しています。

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