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ワクチン冷蔵庫「#プラグを抜こう」が話題、本当にやったらどうなるの?
画像はイメージです(mapo / PIXTA)

ワクチン冷蔵庫「#プラグを抜こう」が話題、本当にやったらどうなるの?

温度管理が難しいとされる新型コロナウイルスワクチン。接種が本格化した5月下旬以降、ミスによるワクチン廃棄の報道も頻繁に目にするようになった。

中でも多い類型の一つが、ワクチンを保管する冷蔵庫・冷凍庫のプラグが抜けていたというもの。ツイッターには「#プラグを抜こう」というハッシュタグも見られることから、意図的な行為を疑う声もある。

●時事通信の記事が話題に

時事通信は6月28日、「全国で相次ぐプラグ抜け ワクチン冷蔵庫、廃棄原因に―ネットで呼び掛けも」というタイトルの記事を配信。問題が起きた自治体や冷蔵庫メーカーなどを取材し、「自然に抜けたとも考えづらい」などのコメントを紹介している。

時事通信が記事であげただけでも、プラグ抜けが起きた自治体は大阪府寝屋川市や兵庫県芦屋市、神戸市、横浜市など、8自治体にもなる。

このほかでは、大阪府堺市でも6月1日と10日、接種会場のホテルで冷蔵庫の電源が切れて、計666人分のワクチンが廃棄となっている。1日はホテル側が誤って電源のブレーカーを落としてしまったとのことだが、10日のほうは原因不明だという。

誤ってコードを踏んでしまうなどのケースも考えられ、本当に単なるミスなのかもしれないが、もしもわざとプラグが抜かれていた場合はどういう罪になるのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。

●業務妨害や器物損壊になりうる

あまり考えたくない話ですが、仮にわざとプラグが抜かれていた場合を想定して解説したいと思います。

わざとプラグを抜く行為によって、接種会場における接種作業という業務が滞る(妨害される)おそれがあることは明らかですから、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立し得ます。

また、プラグを抜くことによって、温度管理ができなくなるとワクチンが廃棄処分となることはニュース報道等によって世間で広く知られていることですから、器物損壊罪(刑法261条)も成立し得ます。

●どのくらいの罰になる?

このように、プラグを抜く行為という1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合を観念的競合(刑法54条1項前段)といいます。

観念的競合の処罰については、その最も重い刑により処断するとされます(同項。吸収主義)ので、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲で処罰されることとなります。

●接種するかどうかは自由、でも妨害はNG

ワクチンをめぐっては誤情報等も飛び交っていますし、ワクチン接種をするかどうかは個人の判断に委ねられているはずなのです。ただ、ワクチン接種を希望する人や接種行為に従事している人に迷惑をかけるような行為は許されません。

上記解説のようにプラグを抜く行為は犯罪行為に該当し得る行為なので、万一そのようなことをすれば、検挙されるおそれがあることを強く自覚していただきたいと思います。

プロフィール

濵門 俊也
濵門 俊也(はまかど としや)弁護士 東京新生法律事務所
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。

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