子どもにケガはつきものと言われますが、もし遊びに来た友人の子どもがケガをしたら——。受け入れ側の親としては、気が気でないですよね。
弁護士ドットコムにも「治療費はどうなるのか」という相談が複数寄せられています。今回は、沙織さん(仮名・34)から寄せられた相談を元に解説します。
●ママ友の子が我が家で転んで…
我が家にママ友と子どもたちが遊びに来た日のことです。小学3年生の大和くん(9)は、ママの都合が合わなかったため、ひとりで遊びに来ました。
ママ達は子どもたちと違う部屋でお茶を飲みながら、いつものように近況報告をしていたんです。子どもたちは部屋で仲良くゲームをして遊んでいたようです。
そしたら急に「大和くんが転んだ」と息子が走って伝えて来ました。急いで駆けつけると、大和くんの歯は欠けてしまっていて…。
大人は誰も見ていなかったので、どんな状況でケガをしたのか詳しくは分かりませんでした。ケンカをしていたということでもなかったようで、私も慌ててしまいました。
ただ、幸いなことに血は出ておらず、大和くん本人も気にする様子がありませんでした。なので、病院には連れて行かず、そのまま遊ばせていました。
日も暮れた頃、大和くんを家まで送り届けました。玄関先で私が説明して謝罪すると、大和くんママは「気にしないで」と言ってくれたので、ひとまずホッとしました。
●えっ?治療費を全額払って欲しい!?
その数日後のことです。大和くんママから突然、電話がありました。
「歯医者に行ったら、神経まで傷ついていて、差し歯にする必要があると診断を受けたんです。治療が長期に及ぶので、治療費を全額払って欲しいと思っていて…。費用は20万円くらいになるかもしれません」
正直、金額の大きさに驚きました。私の家で起きたことでもあるので、治療費は支払う気でいるのですが、20万円全額を支払わなければならないのでしょうか?
●弁護士の法的見解は!?
西山良紀弁護士によると、受け入れた側が法的責任を負うかどうかは、
・受け入れた側がどういった事故の発生が予想できたのか、
・予想できた事故の発生を防止するためにどのような措置をとるべきだったといえるのか、
によって変わってくるそうです。
「小学校3年生くらいの子どもが転倒して怪我をすると予想するのが困難であるときには、沙織さんが法的責任を負う可能性は低いと思います。
例えば、沙織さんの自宅がしっかり整理整頓されていたり、大和君を含む子どもたちが部屋の中でおとなしく遊んだりしていたような状況ですね。
転倒事故を防止するために、走り回っている子どもを注意するなど具体的な措置を取るべきであったと言える場合には、沙織さんが法的責任を負う可能性は高いと思います。
例えば、部屋の床にモノがあふれていたり、子どもたちが家の中を走り回っていたりしたことから、小学校3年生くらいの子どもが転倒してケガをすることを事前に予想することが可能であったと言えるような状況です」
法的な責任を負うかどうかはケースバイケースで、受け入れた側が法的責任を負うかどうかの判断は、なかなか難しい問題のようでした。
●過失相殺が認められる可能性も
では、私は請求された治療費20万円を全額支払わなければいけないのでしょうか。
例えば、今回の転倒事故について、沙織さん側の責任50、大和君側の責任50であった場合は、沙織さんが負担すべき治療費は10万円となるということでした。
幼い子どもがいるという西山弁護士は「いつどんなトラブルが生じるのかわからないので、安心のために個人賠償責任に加入しています」と話していました。
その後、私は大和くんママに事情を説明しながら交渉し、治療費を半額にしてもらいました。
それから、私は子ども向けの傷害保険に入ることにしました。子どもが学校などでケガをした場合、またお友達などにケガをさせてしまった場合に、保険金が支払われるというものです。
まさかお友達に治療費を請求される事態が起こると予想していなかったので、私自身今回のことは勉強になりました。家だからといって安心しきらず、どんなときも子どもから目を離さないということが大事ですね。