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「やんのか?」と生徒に挑発されて、取っ組み合い…先生の「暴力」どんな場合もダメ?
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

「やんのか?」と生徒に挑発されて、取っ組み合い…先生の「暴力」どんな場合もダメ?

先生から生徒への暴力は「体罰」として許されない行為ですが、生徒の態度があまりに悪い場合の指導や、挑発された結果であっても、「体罰」になるのでしょうか?

ネット上のQ&Aサイトには、ある男性教師が、授業中の始めから終わりまで毎回寝ている生徒に腹を立てて出席簿で頭を叩いたところ、周りの生徒から「体罰だ」と言われたと書き込みを投稿しています。教師によると、寝ていた生徒には何度も注意していましたが改善せず、他の生徒からも、「(その生徒の態度は)ひどい」という声があがっていたそうです。

この他にも、生徒が教師を挑発した結果、取っ組み合いのケンカになったという書き込みもありました。現場を目撃した投稿者によると、口の聞き方と態度が乱暴なA君という生徒に教師が「なんだその口の聞き方は!」と注意したそうです。するとA君は「あん?やんのかコラw」とふっかけ、取っ組み合いに発展。教師は床に倒れたA君の胸に自分の片膝を押し付けるなどしたそうです。

態度の悪い生徒を戒めるためにあえて叩くなどした場合や、生徒に挑発されて思わず手を上げた場合も、「体罰」になってしまうのでしょうか?宮島繁成弁護士の解説をお届けします。

●「体罰」にあたるかどう判断する?

学校教育法11条は、校長と教員は、教育上必要があるときは懲戒を加えることができるとしつつ、「ただし、体罰を加えることはできない」と定めています。また、学校教育法施行規則26条は、懲戒するときは、「児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない」と定めています。

体罰にあたるかどうかは、子どもの年齢や健康、発達状況、場所や時間、態様などから客観的にみて、殴る蹴るなどの有形力の行使があったか、肉体的苦痛を与えたかどうかで判断する考え方が有力です。裁判例の多くや文部科学省の通知も同様です。ただし、この考え方については、区別があいまいであるという批判が以前からあります。

上記の考え方によると、殴る、蹴るはもちろんダメです。正座・直立など特定の姿勢を長時間続けさせることなども、肉体的苦痛を与えるものとして体罰にあたります。一方、「放課後に教室に居残りさせる」、「学習課題や清掃活動を課す」、「学校当番を多く割り当てる」などは体罰にあたりません。

また、生徒の暴力行使に対して身を守ったり、他の生徒に被害が及ぶ恐れがあって、これを制止したり、目前の危険を回避するために行ったやむをない範囲の有形力(直接的な暴力)の行使は、体罰にあたりません。

このような考え方に従うと、出席簿で頭を叩いたケースは、何度注意しても改善されなかったという事情があったとしても、体罰にあたるでしょう。

戒める目的であっても同じです。取っ組み合いのけんかになったケースは、生徒の攻撃に対して身を守るという実態があれば、その限度での行為は体罰にあたらない可能性があります。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

宮島 繁成
宮島 繁成(みやじま しげなり)弁護士 ひまわり総合法律事務所
日弁連子どもの権利委員会、教育法制改正問題対策ワーキンググループ。いじめや体罰のほか、スポーツ問題に取り組んでいる。中学校と高校の教員免許を有している。

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