外交や防衛など安全保障に関する情報について「特定秘密」を指定し、その漏えいを防ぐことを目的とした「特定秘密保護法案」の審議が山場を迎えている。政府が指定した「特定秘密」を漏らした公務員らを厳しく罰するという法案だが、報道の自由や国民の知る権利の観点から強い批判の声も巻き起こっている。
このような状況を受け、弁護士ドットコムでは12月3日から5日にかけて、特定秘密保護法案についてどう考えているか、弁護士に緊急アンケートを実施した。「特定秘密保護法案についてどう考えていますか?」という質問に対して、「賛成」「反対」「どちらでもない」の3つの選択肢から回答を選んでもらった。その結果は、次のとおりだ。
(1)賛成 →9人
(2)反対 →85人
(3)どちらでもない →6人
100人の弁護士から回答が寄せられ(12月5日18時45分時点)、「賛成」が9人、「反対」が85人、「どちらでもない」が6人という結果となった。85%の弁護士が特定秘密保護法案に対して「反対」と答えた。
●「国の秘密情報が漏れると国民全体が不利益を被る」
アンケートでは合わせて、その「理由」についても答えてもらった。「賛成」と回答した弁護士からは、次のように「安全保障上必要だ」とする意見が見られた。
「国ひいては国民の利益、安全を守るためには必要。特に敵性外国に国の秘密情報が漏れてしまうようでは、ひいては国民全体が不利益を被ることになる」
「我が国は従来からスパイ天国といわれるほど国家機密の保持に鈍感であり、安全保障をめぐる環境が一層厳しさを増している現状にもかんがみると、秘密保護法制の整備は喫緊の課題である。現行の法律を厳格に運用すればよいとする意見もあるが、法律が厳格に運用されるかどうかは、まずもって法定刑の軽重が大きな影響を与える。現行の国家公務員法の法定刑は軽きに失する」
●「民主主義の根幹である『知る権利』が奪われる」
一方、反対する弁護士からは、「法案の規定があいまい」「何が秘密かわからない」といった意見が寄せられている。やはり、「民主主義」にとって脅威となるという懸念があるようだ。
「報道機関の取材の自由、ひいては国民の知る権利を侵害する。また罪刑法定主義にも反し、不当な処罰、逮捕勾留を引き起こすおそれが高く、萎縮効果も生じる。個人の自由を侵害し、民主主義の基盤を破壊する法案であり、平和主義も投げ捨てることにつながるおそれが高い」
「公務員法の守秘義務条項で十分であるし、法律の内容が曖昧すぎて、濫用の危険が大きい。当初は適正に運用されても、濫用されるのは、国家の緊急事態が発生した時である。
災害などで、一時的に強力な指導力が必要な時は、民主主義機構の一時停止が必要な場合もあるだろうが、危惧される危険は、行政・政権政党に取って緊急と言う理由で、些細なことが特定秘密に指定され、民主主義の根幹である表現の自由(「知る権利」)が奪われる恐れである。憲法改正と同じぐらい、もっと国民の議論を経るべきである」
「基本的人権である表現の自由を侵し、言論を封鎖し、日本を軍国主義国に持って行く危険性があります。治安維持法の悪夢を再現させないためにも、この法案は廃案とすべきであります」
●12月5日20時半から、秘密保護法をテーマに「ネット討論番組」
特定秘密保護法案の審議は、いよいよ大詰め。与党は参議院の国家安全保障特別委員会で採決を強行し、賛成多数で可決された。参議院の本会議で可決されれば、弁護士の多くが反対する法律が成立することになる。
なお、12月5日20時半から、特定秘密保護法をテーマにした討論番組が、朝日新聞デジタルによってネットで生放送される。弁護士ドットコムが企画協力しており、代表の元榮太一郎弁護士が出演。このアンケート結果についても紹介する予定だ。番組は、朝日新聞デジタルの特定秘密保護法案の特集ページで閲覧できる(http://t.asahi.com/cht6)。