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ウィシュマさん事件、死の直前までの「監視カメラ映像」を公開 遺族弁護団「すべての人が見るべき」
ウィシュマさんの妹、ポールニマさん(左)と指宿昭一弁護士(2023年4月6日/弁護士ドットコム撮影)

ウィシュマさん事件、死の直前までの「監視カメラ映像」を公開 遺族弁護団「すべての人が見るべき」

名古屋入管の収容施設でスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった事件をめぐり、遺族側弁護団は4月6日、都内で記者会見を開いて、死亡直前までの様子を記録した監視カメラ映像の一部を公開した。ウィシュマさんが衰弱して、死に向かっていく姿が映っている。

・監視カメラ映像
https://www.youtube.com/watch?v=7Z5PvnqfkyE

●「事件の本質をあらわにしている」

この日、メディア各社に公開されたのは、遺族が国を相手取り損害賠償を求めている裁判で、国側から名古屋地裁に提出された約5時間分の監視カメラ映像の一部(5分程度)。

6月と7月に予定されている裁判の法廷で、約5時間分が再生される予定だったが、市民が監視カメラ映像を見ないまま、入管法改正案(弁護団は改悪案と批判する)の審議がはじまろうとしていることから、弁護団は一部公開に踏み切った。

弁護団の高橋済弁護士は会見で「彼女が一人の人間として、どのように施設の中で亡くなったか、(日本に住んでいるすべての人が)知るべきだ。それを知ったうえで、どういった解決方法があるのか考えるべきだ」と趣旨を説明した。

同じく弁護団の指宿昭一弁護士は「(映像は)ウィシュマさん事件の本質を切り取った形であらわにしている。日本の入管行政が何を考えてどのようにおこなわれているのか、その問題点を鋭く暴くものだ」と述べた。

画像タイトル ウィシュマさん遺族と弁護団の記者会見(2023年4月6日/弁護士ドットコム撮影)

●「裁判に悪影響はまったくない」

弁護団によると、証拠として提出された映像について、国側は裁判の進行協議で公開しないようもとめていたが、民事訴訟上、公開してはいけない規制は特にないという。指宿弁護士は「裁判に悪い影響があるとはまったく考えていない」と強調した。

ウィシュマさんは2021年3月、収容されていた名古屋入管の施設で亡くなった。繰り返し体調不良を訴えていたが、適切な治療を受けられず、亡くなる数日前は歩けないほど衰弱していたとされる。

遺族側は当初から、亡くなるまで2週間の約295時間分の映像を公開するようもとめていた。国側は、保安上の理由などで拒否していたが、約5時間分が名古屋地裁に提出された。弁護団は残りの約290時間についても提出をもとめていくとしている。

●「姉のような犠牲者をもうださないで」

今回の監視カメラ映像の公開について、ウィシュマさんの妹、ワヨミさんは次のようにコメントした。

「姉がどのように苦しみ、どんなに救いのない環境で見殺しにされてきたかを、私たちは、日本の皆さんに知っていただきたいです。姉が命を落とした場所は、姉が心から愛した、この日本でした。皆さんにお願いしたいことは、姉のような犠牲者と私たちのような遺族を、もう出さないでいただきたいということです」

「日本の皆さん、生きようとして見捨てられ、生きることのできなかった姉の姿を見て、人間の命の大切さを思い出して下さい。日本の皆さんには、人間の命を大切にする制度を作る責任があるのではないでしょうか」

「人間を大切にしない入管法改正案に私は反対します。日本人の皆さま、どうか姉の死を無駄にしないで下さい。現在の法律でも、新しい入管法案でも、私の姉のように収容されている皆さまの命は危険にさらされますので、入管法改正案を通さないで下さい」

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