「受信契約に応じなかったとしても、NHKが契約締結を求めてから2週間が経てば契約は成立しているというべき」。こんな判決を堺簡裁が6月下旬に示し、ネット上では、「こんな一方的な契約聞いた事ない」「押し売りではないか」など反発の声があがった。
NHKの報道によると、テレビ受信機を設置しているにもかかわらず、受信契約に応じない大阪府内の世帯に対して、NHKが契約締結と受信料の支払いを求めて提訴していた。堺簡裁は、テレビ受信機の設置が確認された2005年6月から今年3月までの受信料27万円の支払いを命じた。
NHKは同様の裁判を起こし、今年5月までにNHKの主張を認める判決が20件確定しているという。一般的な契約の感覚からすると、かなり一方的な内容にも見えるが、なぜNHKの主張が認められたのだろうか。前島申長弁護士に聞いた。
●他の受信者との不公平をなくそうとしている
「契約は、申し込みと承諾の双方の意思表示の合致により成立するのが民法の大原則といえます。この大原則に則ると、一方的な契約締結はできないということになります。
受信料をめぐる裁判では、裁判で受信者に対して、契約締結を命じる判決が確定した場合に契約が成立すると判断した例があります(東京高等裁判所平成25年(ネ)第4864号)。つまり、裁判で契約締結が確定するまでは、一方的な締結は認められないということです。
しかし、同じ東京高裁で、受信者が承諾の意思表示を行わないときでも、相当期間(長くても2週間)を経過した時点で受信契約が成立すると判断した例もあります(東京高等裁判所平成25年(ネ)第4466号)」
2つの異なる判断があるようだが、後者は今回のケースと同じではないのか。
「そうです。今回の堺簡易裁判所の判決も、後者の高裁判決と同様の判断がなされたものと考えられます。
放送法64条1項では、受信設備の設置者(受信者)に対し、受信契約締結義務を課しています。つまり、テレビを設置している場合、契約を結ばなければならないのです。
後者の東京高裁の判断は、放送法64条によって、受信者には契約を結び、受信料を支払う義務があるとの前提に立っています。
つまり、前者のような意思表示を命じる判決の確定という遠回りな方法ではなく、他の受信料を支払っている受信者との不公平をなくそうとするために、2週間経過時点で契約が成立していると判断しているのです」
前島弁護士はこのように話していた。