「容疑者が鑑定留置されることになりました」――。殺人などの大きな事件で、被疑者や被告人に対して、「鑑定留置」が行われるというニュースを見かけたことはないだろうか。
今年も、AKB握手会襲撃事件や長崎県佐世保市の同級生殺害事件など、複数の重大事件で、被疑者が鑑定留置されたと報じられている。
「鑑定留置」とは、いったい何なのだろうか。どんな場合に行われ、どんな効果があるのだろうか。刑事手続きにくわしい萩原猛弁護士に聞いた。
●「精神鑑定」をするための手続き
「鑑定留置とは、精神鑑定をスムーズに実施するために、拘置所や鑑定を行う精神科医の病院に、被疑者・被告人の身体を拘束する処分のことです。
これまでも被疑者・被告人に精神の障害が疑われ、精神鑑定が実施された事件の多くで、鑑定留置が行われています」
身体を拘束したうえで、「精神鑑定」を行うわけだ。そもそも、なぜ精神鑑定を行うのだろうか。
「精神鑑定が行われるのは、精神の障害によって善悪の判断ができなかったり、自分の行動を抑えることができない人は、罰せられなかったり、刑が減軽されるからです(刑法39条)。
被疑者や被告人に、精神の障害があると疑われる場合、精神科医が、被疑者や被告人の精神状態を調べることがあります」
その精神鑑定をするためには、どんな手続きがあるのだろうか。
「精神鑑定を実施する流れは、捜査段階と起訴後で次のように分かれています。
(1)捜査段階は、検察官の依頼によって精神科医が行います(刑事訴訟法223条)。
(2)起訴後は、検察官・弁護人の請求を裁判所が採用し、裁判所の依頼によって行います(刑事訴訟法165条)」
●期間は通常「3カ月程度」
それでは、「鑑定留置」をする手続きは、どうだろうか?
「鑑定留置も同様に、捜査段階の場合は、検察官の請求によって決定されます(刑事訴訟法224条)。また、起訴後は、裁判所の職権によって決定されます(刑事訴訟法167条)」
鑑定留置の決定がされると、具体的にはどうなるのだろうか。たとえば、被疑者・被告人はどの程度の期間、留置されることになるのだろうか。
「鑑定留置の期間は、3カ月程度であることが多いです。この期間は、勾留中の被疑者・被告人であっても、勾留の執行が停止します(刑事訴訟法167条の2)」
萩原弁護士はこのように指摘していた。