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著作権
2013年11月30日 10時20分

「パソコンも補償金の対象に」 著作権団体が提言する「新制度」の問題点とは?

「パソコンも補償金の対象に」 著作権団体が提言する「新制度」の問題点とは?

著作者の経済的利益を守るために設けられた「私的複製補償金」制度をめぐり、大論争が起きている。きっかけは今月、JASRACなどでつくる著作権利者団体が新たな補償金制度の創設を提言したことだ。

この提言は、特定の機器や空ディスクなどを対象とする現在の制度が、次々と登場する新製品やサービスに対応できなくなっていると指摘。新たに「機能」を対象とした補償金制度をつくることで、今後どんな機器やサービスが新たに生まれてきても、安定して金を徴収できるような仕組みを整えるべきだ、としている。文部科学省の審議会も、この提言について議論する予定だと報じられている。

今回提言された新しい補償金制度は、具体的にはどのような内容なのだろうか。また、一般個人にとって、どのような影響があるのだろうか。著作権問題にくわしい桑野雄一郎弁護士に聞いた。

●あらゆる媒体・機器・サービスが補償金の対象に

「提言の第1のポイントは、補償金の対象を、私的複製に使用される『機器』や『媒体』から、私的複製に供される『機能』に変更するよう求めていることです。

つまり、録音・録画の『機能』を備えている限り、HDレコーダー、PC、MP3プレーヤー、クラウドサービスなど、あらゆる媒体、機器、サービスが補償金の対象になり得ます」

これは裏を返すと、PCやスマホのように用途が限られていない機器からも、補償金が徴収される可能性がある、ということだ。実際に録音や録画をしなくても金を取られるとなれば、違和感はぬぐえない。

●補償金の支払義務者を「事業者」に変更

「第2のポイントは、補償金の支払義務者を『利用者』から複製機能を提供する『事業者』に変更するよう求めていることです。

ただし、事業者に補償金の支払義務を負わせれば、それは利用者に転嫁されることになるでしょうから、結局利用者が負担することになるのは必至です。

この提言が実現した場合、利用者の補償金の負担は増加しますし、現在のような補償金の返還が認められる余地もなくなるだろうと思います」

ここでいう補償金の返還とは、たとえば補償金が上乗せされている空きディスクを購入した人が、それを私的複製に使っていないと証明できれば、補償金の返還を受けられるという制度だ。しかし、書き換えのできない空メディアなどと違い、パソコンなどでそれを証明するのはほぼ不可能だろう。

こうした説明を聞くと、提言はまだかなり生煮えの状態、という印象を受ける。桑野弁護士は次のように指摘し、さらに議論を深める必要があると、指摘していた。

「提言の趣旨は、利用者と複製手段を提供する事業者と権利者の利益のバランスを図るということですが、現在のダビング10やCCCDなどによる複製の技術的制限では何が不足なのか、きちんと整理されているわけではありません。

また、補償金の対象は録音・録画ですが、書籍や雑誌のコピーなど、録音・録画以外の複製行為とのバランスという点でも問題はないのか、という点も議論の余地があるだろうと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

桑野 雄一郎(くわの・ゆういちろう)弁護士
骨董通り法律事務所。島根大学法科大学院教授。「外国著作権法令集(46)-ロシア編―」(翻訳)、「出版・マンガビジネスの著作権」(以上CRIC)、「著作権侵害の罪の客観的構成要件」(島大法学第54巻第1・2号)等。
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