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2018年11月02日 09時56分

トイレ盗撮動画の販売、被害者と面識ないのに「リベンジポルノ法」 奥村弁護士「拡大解釈のおそれ」

トイレ盗撮動画の販売、被害者と面識ないのに「リベンジポルノ法」 奥村弁護士「拡大解釈のおそれ」
画像はイメージです(hanack/PIXTA)

インターネット上で、トイレに入った女性を盗撮した動画を販売したとして、東京都内の40代男性=都迷惑防止条例違反容疑で逮捕=が10月下旬、リベンジポルノ防止法違反容疑で警視庁に再逮捕された。のべ300人以上の女性を盗撮し、約2700万円を売り上げていたという。

報道によると、男性は2017年から約1年間にわたって、東京都豊島区内の飲食店のトイレで女性を盗撮した動画を、インターネット上で販売した疑いが持たれている。10月上旬、カメラの回収に訪れたところを都迷惑防止条例違反で逮捕されていた。

逮捕された男性と盗撮された女性の間に面識はなかったそうで、いわゆる「リベンジ」(復讐)といえないように思えるが、リベンジポルノ防止法違反にあたるとされた。だが、わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士は「拡大解釈のおそれがある」と指摘する。

●ネットで画像を拾って転載しても罪に問われる可能性

そもそも、リベンジポルノ防止法は、正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」という。

「『私事性的画像記録』とは、他人の性的な姿態を撮影した画像(ただし、撮影対象者が第三者が閲覧することを認識したうえで撮影を承諾したものを除く)です。第三者が撮影対象者を特定できる方法で、『私事性的画像記録』を不特定または多数に提供する行為や、公然陳列する行為が禁止されています」

今回のケースのように、相手(撮影対象者)と面識がなくても成立するのだろうか。

「『私事性的画像記録』の提供罪・公然陳列罪は、行為者と撮影対象者との関係は要件にはなっておらず、嫌がらせ・復讐目的も必要ありません。そのため、ネット上で画像を拾ってきて、別のサイトなどに転載したところ、実は『私事性的画像記録』にあたるものだったら、リベンジポルノ法違反に問われることもありえますので、注意が必要です」(奥村弁護士)

●かならずしも「わいせつ」ではない半裸画像も含まれる

一般に「リベンジポルノ」とは、元交際相手や元配偶者に対する嫌がらせや、復讐(リベンジ)の目的で、交際中や婚姻中に撮影した相手の裸の写真などを、インターネット上に公開するなどして、不特定多数者に公表する行為のことだ。通称とはいえ、法律の名称と内容がズレているような気もする。

「当初、リベンジポルノを処罰するための立法と喧伝されましたが、実際は、性的プライバシーが保護法益とされています。先ほど述べたように、嫌がらせ・復讐目的がなくても処罰されることになっています。

また、法律上のリベンジポルノの中には、『衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器、その周辺部、臀部、胸部)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの』(同法2条1項3号)もあります。かならずしも『わいせつ』ではない半裸画像も含まれることになるので、注意してください」(奥村弁護士)

●奥村弁護士「国法レベルで規制を議論すべきだ」

今回のケースにリベンジポルノ防止法を適用することについて、奥村弁護士は次のように批判している。

「立法時の国会審議では、終始、『リベンジ』性が強調されて、他人による盗撮画像・動画については触れられていませんでした。それなのに、リベンジ性がないトイレ盗撮動画・画像にも適用するのは、拡大解釈のおそれがあります。

たしかに、トイレなど、閉鎖的な空間における盗撮行為については、法律の対処が遅れていて、国法上は軽い窃視罪(軽犯罪法1条23号)しかなく、各地の迷惑防止条例でマチマチに補完している状況です。トイレ盗撮動画・画像の扱いについても、国法レベルで規制を議論すべきだと考えています」(奥村弁護士)

(弁護士ドットコムニュース)

奥村 徹弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
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