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性風俗店、キャバクラ、AVの「路上スカウト行為」、法的にアウトな理由
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性風俗店、キャバクラ、AVの「路上スカウト行為」、法的にアウトな理由

繁華街では、言葉巧みに女性たちを風俗店やキャバクラで働くように勧誘する「スカウトマン」たちをよく見かける。彼らの行為を迷惑だと感じる人もいるはずだ。10月下旬には、路上でスカウトした女性を性風俗店に紹介したとして、大阪府警が職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで、人材紹介会社の社長らを逮捕したと報じられている。

路上でよくみかけるスカウト行為だが、本当は違法なのだろうか。風俗店にかぎらず、キャバクラ、アダルトビデオなどをめぐる路上でのスカウト行為には、どのような法的な問題があるのだろうか。大川一夫弁護士に聞いた。

●「職業安定法」では原則、スカウトを禁止

「結論から言えば、路上でのスカウト行為は、職業安定法と迷惑防止条例によって禁止されています。

まず前提として、労働者の募集、職業紹介、労働者供給について定めた職業安定法では、原則として、『労働者供給』を禁止しています(職安法44条)。スカウトはこの『労働者供給』にあたります。

これは過去に、労働者供給事業により、労働者のピンハネや過酷な労働条件を生んだことの反省として規定されたものです。スカウトなどの労働者供給を行った場合、『1年以下の懲役又は100万円以下の罰金』(職安法第64条)に科されると定められています」

紹介先が風俗店でも『労働者』とみなされるのだろうか。

「風俗嬢らが『労働者』にあたるかどうかという問題があります。これについては名目にとらわれず、勤務時間や場所が拘束されているか、専属性の有無、使用者の指揮命令下にあるか否かなど実際の状況から判断します。風俗嬢も、多くの場合は『労働者』に当ると思います。

また、『有害業務』とは、『公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務』(職安法63条)のことです。もっとも何が有害かはその線引きは難しく、また、わいせつ概念のように社会意識の変化によって変わっていく可能性もあります。過去の判例からいえば、売春、風俗、AV撮影が『有害業務』にあたるといえます。

前述したように、労働者の供給は原則として職安法によって禁じられており、違反すれば処罰を受けます。さらに、その供給先が『有害業務』(「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」)だと、その罰則はなお重くなっています。つまり違法性がそれだけ高いわけです。

職安法63条では、有害業務に紹介したり、供給を行ったりすれば、『1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処する』と定めています」

●迷惑防止条例には?

迷惑防止条例には觝触しないのだろうか。

「迷惑防止条例を制定している自治体は多いですが、ほとんどの場合、路上での『役務』の勧誘を禁止しています。この『役務』というのは『労働』よりも広い概念ですから、実質的に判断して労働者でないケースでも、風俗嬢やキャバクラ嬢などへの勧誘も禁止しています。

たとえば、東京都の迷惑防止条例では、『人の性的好奇心に応じて人に接する役務』『専ら異性に対する接待をして酒類を伴う飲食をさせる役務』『性欲を興奮させ、又は刺激するものをビデオカメラその他の機器を用いて撮影するための被写体』を禁じています(第7条1項5号)。具体的には、風俗店やキャバクラ、AV女優が禁止されていることになります。

また、『人の身体又は衣服をとらえ、所持品を取りあげ、進路に立ちふさがり、身辺につきまとう等執ように役務に従事するように勧誘すること』も禁じられています(第7条1項7号)。タレントやモデル事務所などによる執拗な勧誘も禁じられているといえます」

街頭では当たり前のように見られるスカウト行為だが、実はれっきとした違法行為だった。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大川 一夫
大川 一夫(おおかわ かずお)弁護士 大川法律事務所
大阪弁護士会所属、元同会副会長。現在、同会労働問題特別委員会委員、刑事弁護委員会委員。龍谷大非常勤講師、日本労働法学会会員、連合大阪法曹団代表幹事、大阪労働者弁護団幹事など。

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