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野々村竜太郎氏が初公判「欠席」 被告人不在のまま進めることはできないのか?
野々村氏が再び注目を集めている

野々村竜太郎氏が初公判「欠席」 被告人不在のまま進めることはできないのか?

日帰り出張などを装って政務活動費約900万円をだまし取ったとして、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で起訴された元兵庫県議・野々村竜太郎被告人が、11月24日に神戸地裁で予定されていた初公判を欠席した。

報道によると、野々村被告人から「精神的に不安定で出廷できない」と連絡があったと、弁護人が法廷で説明した。午後3時から2時間の公判が予定されていたが、わずか9分間で中止が決まった。裁判所は、改めて公判の期日を指定する。

刑事事件の裁判は、被告人がいなければ公判を進めることができないのだろうか。元裁判官の田沢剛弁護士に聞いた。

●被告人の防御権を保障している

「刑事訴訟法286条は『被告人が公判期日に出頭しないときは、開廷することができない』と定め、さらに同法288条1項は『被告人は、裁判長の許可がなければ、退廷することができない』と定めています。

つまり、被告人の出頭(出廷)は、裁判を始めるための要件であるとともに、裁判を継続するための要件とされているわけです」

田沢弁護士はこのように述べる。どうして、そうした仕組みになっているのだろうか。

「被告人が刑事裁判の当事者の一人であり、有罪判決を受けた場合は処罰の対象となることから、その防御権は十分に保障されなければならないからです。

単純に被告人が出頭しないというだけで開廷して手続を進めてしまうと、被告人が十分な防御を尽くせないまま処罰されることになりかねません」

ただ、そうなると「逃げ得」になってしまうのではないか。

「確かに、被告人の不出頭を理由に全く開廷できないとすると、今度は迅速な裁判の進行を阻害することになってしまいますし、国家として刑罰権を行使できなくなります。

そこで、刑事訴訟法では、軽微な事件であるなど、一定の場合には被告人の出頭がなくても開廷できるようにしてバランスをとっています(刑事訴訟法第284条等)。

ただし、今回の事件は詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われているわけですから、出頭が不要な軽微な事件にはあたりません。そうすると、被告人の出頭が免除される例外的な場合に該当しない以上、被告人が出頭しないと開廷できないということになります」

●出廷しないとどうなる?

では、今回のケースで野々村被告人がこれからも出廷しない場合、いつまでも裁判が進まないということだろうか。

「正当な理由がないのに不出頭を繰り返すのであれば、強制的にでもその出頭を確保しなければなりません。そのような場合は、裁判所が勾引状を発付して被告人を強制的に連れて来ることになります。

在宅のまま起訴されたからといって、公判期日への不出頭を繰り返していると、やがては身柄を拘束されることになりかねませんし、裁判所の心証も悪くなってしまうでしょうから、裁判所からの召喚状には、素直に応じるべきでしょう」

田沢弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

田沢 剛
田沢 剛(たざわ たけし)弁護士 新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。

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